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 永久なる愛 







 永遠の愛なんていらない。だから、刹那でいい。あなたの愛を、独占したかった。










 あなたは世界を、その歴史を、公正な眼(まなこ)で見つめる傍観者だから。
 だから、きっと、永遠なんて望んではいけないのだと。そう思います。
 あなたはすべてに対して第三者でなければならないと。そう聞いています。
 だから、あなたの心の傾きを、それを永久に独占することなんて、できやしないんだろうと。そう、理解しています。
 けれど。けれど、今だけは。
 あなたが私に愛を囁くこの瞬間。
 あなたが私をきつく抱きしめているこのときだけは。
 嗚呼。
 あなたの心を、私に独占させてください。




 まるで死の瞬間の鳴き声のような。
 この身が衝(つ)かれて絶頂を迎える喘ぎのような。
 そんな刹那的な快楽。
 退廃的だと哂うがいい。
 それでもあなたの愛を独占したい、浅ましきこの思い、この純情、純愛を。





 愛しています、ラビ――。






 ラビの背中に回ったアレンの腕の先。その掌が、きつく握り締められ、ラビの団服に皺を作った。










 君はこの世の全てを愛してやまないから。
 君の愛をこの自分ただ一人だけに向けるだなんて、無理だと思った。
 だってそんなのは君じゃない。僕だけに笑いかける君なんて。僕だけにしか気を配らない君なんて。世界を愛していない君なんて。
 きっと、それは僕の生み出した幻。それも最悪にデキの悪い、紛い物。
 君はこの世の全て、醜いもの、美しいもの、痛みも悲しみも、尊きもの全て。丸ごと愛してる。
 だからせめて、このときだけは。
 君をこの腕に閉じ込めているこの今この瞬間だけは。
 せめて、僕だけの君でいて欲しい。




 天にも地にも居所のないこの思い。
 即物的で獰猛で、そのくせ何よりも臆病なこの姿。
 誰かでなく君を。いつかでなく今を。心も体も何もかも。君の何もかもを求めて手を伸ばす。
 滑稽だと哂う悪魔と、醜いと嫌悪する神と。
 勝手にするがいい。
 自分がそこにある。その外で、何が、誰が、どれだけ騒ごうと。
 この瞳を開けば、もう何も聞こえはしない。
 まるで死に面する静けさで、極楽鳥の飛び立つ熱帯の森に佇むのだ。





 アレン。愛してる。好きなんさ、どうしようもなく……! ……アレンは、俺のこと、どれくらい、愛してる…―――。





 その胸の中に閉じ込めてしまえたらと願うように。アレンの体に回されたラビの腕が、より強く二人の身を密着させた。











 息苦しいほどに抱き締め合って。
 隙間もないほどに体を寄せ合って。
 それでも埋められないものがある。
 決して同じに離れないから感じられる愛が。
 決して重なり合えないことに切ないまでの痛みを与えてる。











 永遠にその愛を独占できるだなんて思っていない。でもせめて、刹那でいい。
 貴方のその愛が、私だけに向かっていますように。向かうことがありますように、と。
 そうやって願う私を、私たちを、誰かが嘲笑っているのでしょうか。
 高らかに鳴り響くその笑い声は、私の幻聴なのでしょうか。まるで鐘の音のように。
 こんなにも五月蝿く周囲を震わせているのに。
 どうして、誰も気がつかないのか。
 空は高く、天塔の隙間に垣間見る太陽が、音もなくただ照り返していた。










 永遠の愛なんていらない。だから、今だけは。私だけのあなたでいて。
 お願いだから。他にはもう、何も、いらないから……。









talk
 難産でした。この次の『幸福大団円』のネタはすでに出来ていますが、このお題はまったく何もが生まれず、一年近く放置…。漸く書き出しに成功しました。今回は雰囲気重視。書き上がりの品は気持ちや動作をより正確に伝えようと書き込みすぎたところがあったので、がんがん削除して、どんどん単語の列挙状態にしました。意図的です。気持ち、前半アレン、後半ラビな感じで。
 なんだか原作でのラビアレの絡みがとっても薄くて妄想が尻すぼみになっていたのも、遅筆の原因かと思われます…。
 ご意見ご感想お待ちしております。_(c)2006/09/07・08_ゆうひ
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