+ 偽りの青空だとしても +










この世界の崩壊が

正しいことだとは思わない










 通信が開かれ、流れてきたのは…懐かしい、声だった。





「キラ!!」
「アスラン!!」

 アークエンジェルの中へと通信は流れている。
 でも…コーディネイターだって知られているから、別にいいか…。

「キラ、なぜ君がそんなものに!!」
「アスラン!君こそ、どうして…!!」

 懐かしい声。
 ずっと聞きたいと思ってた。
 会いたいと思ってた。

 どうして、今、ここで?
 どうして、ここで出会ってしまったんだろうね。

 こんな風に。

「アスラン…。君は、変わったのかな」
「キラ?」

 彼が云いたいことはわかるんだ。
 マリューさんと同じようなことを云いそう。

 戦争に巻き込まれたの?
 自分から、身を投げたの? 
 どちらにしても、選んだんだね。君は。

 自分の意思で、そこにいる。

「ぼくは、戦争は嫌だ」

 たとえ現実がそうだったとしても。

「だから、この中立国へやってきたんだ」

 たとえ現実がそれを許さなくても。

「キラ!!話を――君なら分かるはずだ!!」
「なにがだい?アスラン…」

 どちらが正しいのか?
 地球連合軍とザフト軍。
 どちらも戦争をしているのに?

「ぼくは…戦争は嫌いだ」

 好き嫌いの問題ではないのかもしれない。
 でも、戦争をし続ける国の正義なんて認める気にもならない。
 どれほどの被害や哀しみを受けていたとして、それに憐れみがおきることはあっても、この行為を許す理由にはならない。

 罪の深さをごまかしてはダメだよ。
 哀しみは許しの理由にはならない。

 だって、これはただ渦巻く怒りと破壊。

「たとえ偽りの青空だとしても、ぼくはその青空が消えるのは嫌だ。たとえ何も知らない無知の上に築かれる笑顔だとしても、哀しみを隠した偽りの笑顔だとしても、ぼくはみんなと笑って生きていたい。みんなに笑っていてほしい」

 君が…あの時。
 それでも、ぼくに笑いかけてくれたように。

 哀しみに泣き続けることも、悲嘆にくれることも否定しない。
 ときに人はどうしようもない憤りに襲われることも仕方ない。
 でも、最後はみんなで笑いたい。

 そんな日常がいい。

「あの時、あの炎の中で一瞬だったけど…見た、君は、決して笑えそうになかったよ」

 今の僕も、きっと笑えない。

 大切なものが炎に包まれて、崩れていく。
 たくさんの人が怯え、泣く。
 たくさんの人が死んでいく。

 僕は…もう、戻れないのかな―――。

「キラ…君なら分かるだろう。僕らコーディネイターをナチュラルは決して認めようとはしないんだ。君が云うように僕らが笑って生きていくために、これは必要なことなんだ」
「だから…ぼくに、ザフトにこいって云うのか。君は」
「上の方は僕が説得する。大丈夫だ。君はコーディネイターだし、とても優秀だ。僕の…」
「僕の両親はナチュラルだよ」

 第一世代のコーディネイターの僕の両親は、ナチュラルだ。
 この戦争は、コーディネイターとナチュラルの戦争のようなもの。
 君は、僕に…なにをしろというんだ?

「ザフト軍のMSのいくつかを、破壊した。君の友達も…その中にいた?」
「キラ…」
「僕のここでできた友達は、ナチュラルだよ。いつも、どうということもない会話を繰り返して…でも、今は危険に晒されてる。不安なんだ。僕も、彼らも」

 ついさっきまで、笑っていたんだ。
 周りが戦争をしていて、どこかに哀しみや不安や憤り、矛盾を抱えながら、それでも笑えていた。

 ずっと願ってた。
 ずっと思っていた。

 どうして、ここに、君が…アスラン。君がここにいないのかと。

「アスラン。ナチュラルとコーディネイターは、一緒に笑い合えるよ。手を取り合えるよ。支えあえる」

 こんなことをしなくても。
 争わなくても。

 地球とコロニーも。





 たとえ偽りの青い空だとしても…それが消えてしまうのは……嫌だから―――。





 今、僕と君はこうやって相対し。

 ぼくはいつも、この空を飛ぶトリィを見ていた。










人のいる世界でなくては
人間は生きてはいけないよ

青い空でないと
人の心は晴れないよ

たとえ偽りの平和でも
戦争よりはずっといい

みんな一緒にいられる
ぼくときみも一緒にいた

一緒にいられた

たとえ偽りの平和でも
砂の上に築かれた世界だったとしても

それでも





僕と君
一緒で

微笑えていた












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 あとがき +------------------------------------------------------

 正真正銘初、起動戦士ガンダムSEED小説です。
 日記の方で設定がある程度見えてこないとぱろは書けないとか云っておいて次の日には我慢しきれずに小説UP。
 でも感想の延長のようなもので、やはり物語的なのは書けませんでした。
 ゆうひはアスラン×キラ派です。むしろアスラン→キラです。
 今回はあえてかぷにはならないように、キラがアスランのことを(もちろんその逆も)大切な存在として思っているというのだけ出したいと思い、あえてアスラン×キラっぽくならないようにしたのですが…いかがでしたでしょうか?
 まだいまいちきゃらの言葉遣いとかが見えていませんので違和感ありまくりですね(アスランの一人称って「俺」じゃないですか。でもなんか「僕」っていう方がここではあっている気が勝手にしてます/汗)。場面としては第三話の終わりの直後です。
 スクライドの初はいきなり、うらぎゃぐでしたので、SEEDの初はちょっとシリアスっぽくなってよかったよかった(笑)
 それでは、ご意見ご感想頂けたらかなり嬉しいです(切実)---2002/10/20

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