+ 桜の木の下で +










届け










「プラントと地球で戦争になるなんてこと、絶対にないよ」

 そう云った彼に、僕は曖昧に微笑うことでしか答えられなかった。





 友人達の多くが、プラントに疎開していった。彼らは僕もすぐにプラントに来るのだろうと訊ねてくれる。
 何度も頷きたかった。

 コーディネイターとナチュラルの間で戦争になるなんてことないと、あの頃、他の誰よりも一番近くにいた彼は云っていて。
 そう云って優しく微笑ってくれた。
 僕も、心から微笑って答えたかった。

 僕はコーディネイターで、両親はナチュラルだ。
 僕の年齢でのコーディネイター第一世代は滅多にいなくて…だから、それに対する世論も大きくはなってくれない。

 違う。
 本当に戦争になると思っている人間が少なすぎるのかもしれない。

 僕の回りの友人達も、そうだった。

 でも、僕はきっと気がついていたんだ。
 あの頃から、きっと僕は知っていた。
 戦争が、もう回避できないところまで来ているということを。

 まだ子供の僕だけど、大人の云うことや世の中の動きや流れとか。そういったことがまったくわからないほど子供でもなくて。
 だからこそ、夜中、皆が寝静まった頃になっても顔を曇らせて話し合っている両親を、僕は物影から見やることしかできずにいた。

 ナチュラルである両親を受け入れてくれるコーディネイターは、きっといない。
 でも、地球ではコーディネイターである僕を受け入れてくれるところがきっとない。
 僕たちは…家族で、離れ離れになんてなりたくなくて……。

 父や母がどんな結論を出すのか、僕はいつも不安だった。
 離れ離れになるのかと、不安で仕方がなかった。

 僕は両親を愛していて、両親は僕を愛してくれていた。

 お互いの安全のことを考えれば、その方がいいのかもしれない。
 危険なところで一緒に暮らすよりも、お互いの身の安全の確実なところで、別々に暮らした方がいいのかもしれない。
 ただ無事でいてくれるだけで…それだけで……。

 でも、僕は嫌だ。
 それがただの我侭で、我侭が云えない状況になりつつあるのは…今がその時なのは、わかっていた。





 桜の木の下で。
 彼は僕に云ってくれた。

「心配することないよ」

 微笑って頷きたかったッ。
 「そうだね」って、そう云って別れたかった。

「何かあったら、すぐに飛んでいくよ」

 この鳥型のロボットのように?
 その鳥型のロボットのように。

 互いに小さく微笑んで。
 でも、僕の心は深く沈んでいた。


 満開の桜。
 木の下で。

 僕の心は闇の中にあった。










微笑って生きること

なんで、そんなことさえも
こんなに遠いのだろう

ただ
僕は

ここにいたいだけなのに










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 あとがき +------------------------------------------------------

 一度は書かないといけないような気がする桜の木の下で。
 それだけです。
 まだ設定がきちんと良くわかっていないのででっちあげ部分も多いですが…まぁ、これからもっと増えていくことでしょう。
 中途半端で申し訳ありませんでした。
 それでは、ご意見ご感想頂けたらかなり嬉しいです(切実)---2002/10/31

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