フレンズ・アクション 





「なあ、フッチの奴知らね?」

 場所はアサキ城。この扉の先に、ワンクッション間を置いて軍主の部屋へと続く。
 そのワンクッションの間から顔を覗かせて訊ねたのが、トラン現大統領の放蕩息子、シーナだった。

「さぁ…? ――今日は見かけませんでしたけど…」

 答えたのはこの部屋の正当な主。軍主ホノカだった。
 軍主とは云ってもまだ十代も前半の少年だ。あどけなさの残る薄茶の瞳が、、『(フッチが)見つからないなんて』と、逆に不思議そうに問い掛ける。
 探し人のフッチは元竜洞騎士団の見習い騎士だ。これもまだ十代も前半の少年で、竜と共に大空を翔けていた頃を思い出してなのか、少しでも高いところを好んだ。
 そんな彼の出没ポイントは城壁近くにある展望台と、軍主の部屋の先にある、屋上よりもさらに高く。新同盟軍の旗の掲げられた天辺だ。

「どっちにもいねぇんだよなぁ…。もしかしてホノカのところにでもいるかと思ったんだけどさ」
「今日は僕も会ってないです」
「…つーか、ルックのところじゃないのか?」

 がしがしと髪を掻き混ぜながら眉を顰めるシーナに、律儀に返答を返すホノカ。ホノカとフッチは年齢も近く、動物(?)と心を通わせる特技を持っているためか、何かと馬が合うらしく、仲はいい。
 展望台ではなく屋上に出るときには、必ずフッチはホノカに顔を見せていた。
 そこに口を割り込ませたのは、ホノカにとってはかつてあった戦の英雄。シーナにとってはこの戦争の以前に参加した戦争でのリーダーであるレイ・マクドール。ホノカの客人として彼と時間を共有してたレイは初めからこの場にいたが、さらっと無視されていたのだ。

「あ、そうですよね。シーナ、約束の石版のところは覗いたの?」

 レイの台詞に賛同の意を示したホノカに、訊ねられたシーナは苦虫をその端正な面に乗せる。唸りながらの答えに、レイとホノカは納得せざるを得なかった。

「うーん。っつーか、本命はそっちなんだよな。ルックを探してんだけどさ。あいつの定位置にいなくて。で、あそこにいなければ後はフッチのいるところだろ。そう思ってフッチを探してんだけどさ」

 こんなときに限って二人ともが定位置にいないなんて。
 あの二人が出歩くとなればその場所は限られてくる。食堂や図書館。商店街と化している中庭も覗いた。或いはフッチの保護者であるハンフリーの元にいるのではないかと、あの二人だけであるならば無縁の酒場にも顔を覗かせてみたが、成果は伴ってはくれない。

「行き違いになってるんじゃないですか?」

 シーナの語ったルートはほぼ城を一周しているといっても良いものだ。
 悩む三人を前に、次に口を挟んだのはやはりホノカの客人としてアサキ城に滞在していたサツナだった。

「なら簡単だ。ルックが約束の石版を離れる理由はフッチしかいない。そのフッチが城中を探してもいなかった。ならば次は『サスケ』に的を絞ればいい。彼のいるところなら、二人を探すよりも簡単に見つかる」

 ここで驚くべきは、興味がないといいつつ、それでも周囲の人物の行動パターン、特性を的確に捕らえているところだろう。さすがは、かつて天魁星として軍主を勤め上げただけはあるとでも云うべきか。
 ルック、フッチ、サスケの三人は、性格も所属も趣味も、戦闘方法も。何もかもに共通点がない。唯一の共通点といえばその世代くらいだ。しかし彼らにはもっとも肝心な共通点がある。それが、この同盟軍でも名高い『美少年攻撃』のメンバーであるということだ。
 特に仲がいいのがフッチとサスケの二人で、興味と行動力に溢れたサスケがフッチを連れ回す光景は珍しいものではない。誰にも無表情、無関心の風の魔法使いが唯一気を向けるフッチの後を――結果的にはサスケに付き合うということになっていると気づきながら――不機嫌そうにその二人に居つき従うルックの姿とあわせて、むしろ名物と化している。

「あの三人はいつも一緒にいる。そして一番騒がしいのはサスケだ。彼を探せばいい。所詮は外の世界を知らない箱入り忍者だ。保護者も目を光らせてるし、単純だから行く場所なんてフッチの行動範囲よりも狭い」

 ずばり語るサツナは、そのまま部屋を出て行く。おそらく彼にはサスケ――に連れ出されたフッチ――そしてその後を不機嫌顔でついて行ったルック――の居場所にあてがあるのだろう。
 シーナはもちろん、ホノカやレイも顔を見合わせて、その後をいそいそと連れ立ってつき従った。





 かくして道場にて無事に美少年三人組は発見された。








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 仕事中に考えました。こんな不真面目な奴でも生きる権利はあるのです。そして雇う人間もいるのです。せめて週一更新は保ちたいので、休みの前の日あたりは脳をフル回転させてネタを考えます。そのときは邪馬台幻想記もD.Gray-manも幻想水滸伝もぐるぐるとネタが渦を巻き、その中からもっとも明確なものを掴み取ります。今回はこれ。最近幻水の更新(特にルクフチ)がちょっと止まっている気がしてたのもその理由の一つです。短くて(でも書き始める前の予想通りの長さ)くだらないけど時間は掛かってます。
 ご意見ご感想お待ちしております。_(c)2006/10/14〜15_ゆうひ。
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