白百合革命
-アクアブルーの失望-
一目惚れってのは、案外侮れない。 |
オベル王国の現国王、リノ・エン・クルデスは群島諸国連合の首魁をも兼任する豪胆な男だった。 一見するとどこにでいる不良親父であるリノは、その外見を裏切らずに、ふらふらと街に出ては市井で市民と馬鹿話に興じることを趣味としている道楽親父だ。しかしそんな姿とは裏腹な狡猾な立ち回りは誰もが認めるところだろう。数年前までは意思のばらばらであった群島諸国を連合という枠組みで統一させたその手腕は、広く人々の噂に上る。 北のクールーク皇国による群島地域への侵攻が本格化した折りの彼の行動は見事としか言いようがないものの、どうにも納得のいかない人々が多いのも事実だった。 彼を語る上にあっては、同時に彼の娘達の話題も外してはならない。 オベル国王リノ・エン・クルデスには二人の娘がいる。どちらも器量にも才覚にも優れた素晴らしい人物で、父王であるリノよりもよほど秀でた人物であるとは、影ながらの、しかし誰もが同じ意見を見る常識として、人々の口に上った。 一の姫であるフレア王女。その明るい色の金の髪は間違いなく父親譲りだが、ふわりと羽の広がるように巻き上がる柔らかな質感は母親譲りだろう。彼女の髪は最高級の金糸にも勝るとは誰も外見の一致を見るに違いない。美しい外観に、凛とした瞳は真っ直ぐに世界を見つめ、彼女は己の両肩に科せられた責任に臆することなく立ち向かうのだ。 彼女こそが次代のオベル国王。群島を束ねるものになるであろうことは、誰も疑ってはいない。父親以上の生真面目さと真剣。そして純粋をもって、国とそこに生きる人々のために全てを捧げる覚悟を、既に固めていた。 そして二の姫であるサツナ王女。彼女は姉のフレアとは逆に、その髪色は母から、質感は父から受け継いだようだった。どちらに似ても人当たりのいい性格になるだろうに、彼女はどちらにも似ずにどこまでも淡々とした少女としての成長を遂げた。とにかく笑わない。泣かない。怒らない。 我が道を行くあたりは父譲りと云えなくもないが、それにしても捉えどころのない人間だった。少なくとも、彼女を聞き見知る人々にはそのように感じられた。 決して人が悪いわけではない。しかしいい人とはとうていいえない。剣の腕がべらぼうに立ち、姉が王になり、妹はそれを守護する騎士にでもなりそうだと、人々は半ば冗談にもなりそうにないことだと、口元を引きつらせながら口に上らせた。 そんな二の姫に婚約話が持ち上がったのは、春も盛りの、花の香りも芳(かぐわ)しい季節(ころ)。群島ではこれを堺にさらに太陽の光が眩しさを増す季節のことだった。 告げた父王に、冷たい声音と視線で反論したのは、以外にもその最愛の妻である王妃であった。 「あなた。娘を政治の道具にすることはおやめください。以前はフィンガーフート伯爵家のスノウ。ラズリルがクールークに寝返れば、次は赤月帝国の将軍の息子。いったいどういうつもりなんです」 思いがけない冷ややかさを伴った妻の言葉に、リノはうっとたじろいだ。彼はこの妻に頭が上がらないのだ。 母へ援護射撃したのはやはり弱い愛娘のうちの姉の方だった。彼女は冷ややかさというものではないものの、明らかに眉間を顰めて抗議の色を前面に乗せている。 「お父様。私もお母様の意見と同じだわ。まるでサツナを外交の道具のように…」 言葉を濁し、フレアは横目に妹姫であるサツナの様子を伺った。 サツナは相変わらずの能面顔でじっと、それらの遣り取りを眺めやっていたが、場にいる自分以外の全てが自分の意見に注目していると悟るや、面倒臭げに胸中で溜息を一つ零してから口を開いた。それは本当に淡々としていて、まるで本心を隠しているかのようにさえ疑ってしまうものであったが、サツナにあってはそれは疑いすぎもいいところだと云わざるを得ない。 彼女は本心を隠さない。本心を語ることを躊躇わない。ついでに言葉も選ばない。一切の配慮がない。 サツナのそれは家族に対しても変わることがなかった。 「別に構わない。スノウは悪い人間じゃなかったから嫌だといわなかっただけで、それがいいってわけでもなかったし。むしろ、群島は決してクールークの支配を受け付けないという方針がきちんと決まっているんだから、クールーク側についたフィンガーフート家との繋がりを強くしようなんて無理な話だし。だったら、同じくクールークと敵対している赤月帝国との親交を深めておくことは有効な手だ。現在の国王の実子はすべて既婚、又は婚約しているからそれは望めないけれど、国王の信任の厚い名門貴族出身の将軍の息子が相手であれば申し分ない。彼自身も優れた人物だと噂だし、赤月帝国の黄金帝にさえ、娘がいたら何が何でもその夫に迎えたのにとまで云わせたほどの人物なら、とにかく『嫌だ』ってことにもならないだろうし」 一気に捲くし立てて、サツナは紅茶を一口、口に含んだ。 優雅に紅茶を飲むサツナに、母と姉姫は憂いに満ちた瞳を向ける中で。一人、父であるリノはぼんやりとではあるが懸念していた。 (嫌になるも何も…。むしろ向こうから突き返されなきゃいいんだがなぁ…) どこの世界に、能面、無表情の少女を嫁に貰いたいなどという青少年がいるだろう。男の子の、女の子への夢を悉く裏切るような性格をしているのがサツナなのだ。 リノの懸念はサツナを知るものであれば大多数のものが考えるであろうことではあったが、残念ながら今、彼の目の前にいるのは貴重な少数派だった。或いは唯一といっても過言ではないかもしれない二人だ。 愛しの妻と愛しの娘は――リノはサツナを愛していないわけではない。だがしかし。如何せん、彼は基本的に計算高い男であった。故に、世継ぎではない二の姫は外交手段に用いることにしたのである――、妹姫を『少女』だと思っているから。リノや大多数が思う懸念など思いつきもしないのだろう。 ただひたすらに、見も知らぬ男性の元へ嫁ぐこと。そのことを承諾してしまった彼女の身を案じるばかりた。 そんな二人を前にして、その懸念を口にしなかったのは、賢明な判断としか言いようがなかっただろう。口に使用もなら最後。彼の夫として、父としての信頼や畏敬の念は、地にめり込む勢いで。失墜したに違いないのだから。ただ一人、サツナを除いては。 彼女はそんなことでは心を動かされない。そもそも、彼女に父への信頼や畏敬の念がある可能性は――虫の息より儚いかもしれない……。 海上でクールーク皇国の南端へ。そこからは馬を使い、赤月帝国の国境入り口へ辿り着けば、馬車が用意されていた。 馬車に揺られながら何気なく外を眺めれば、サツナと同じ年頃の少年が壁に持たれるようにして倒れているのが視界に写る。青系で統一された装束に、背には矢筒を背負っているようだ。 (こんなに豊かな国にも、行き倒れってあるんだな…) などと、サツナは半ば感心しながらそれを見つめていた。姉であれば確実に心を痛めたであろう景色にも、一切感情の動くようなことがない。そんな自分のありように悩むこともないのが、サツナのサツナたる所以である。 馬車は遅過ぎず、早過ぎずの速度で黙々と進む。流れてゆく景色と共に、だんだんと遠ざかる行き倒れさんの姿を目で追ってしまうのは無意識でのことだった。 「止めて」 思わず馬車を止めてしまったことも。 サツナはサツナは驚きに目を丸くする従者達には一切構わずに、さっさと自分からその扉を開け放つやいなや、ドレスの裾をたくし上げて小走りに行き倒れ少年に駆け寄る。近寄ってみればそれはサツナよりも幾分か年上の青年だった。 「大丈夫か」 腰を曲げて、地に倒れ伏す青年に顔を心持近づけて声を掛ければ、青年がぱっと目を開いた。その琥珀色の瞳は思いがけない事態に驚愕してだろう。ぱちりと見開かれている。 はとが豆鉄砲を食らったかのようなその表情は暫し保たれ、ぱちぱちと数度瞬きした後で、青年は腹を抱えて爆笑した。 「あはは。わ、悪い…。俺は別に行き倒れでも何でもねぇよ。ただここで昼寝してただけ。誤解させちまって悪かったな」 目に涙まで浮かべて笑いながら云った青年に、サツナは珍しく目を丸くした。なんだか呆気に取られてしまった。 そもそもこんな路上――赤月帝国は群島諸国とは違い、夏でもひんやりと肌寒い。しかも塗装は石畳が基本だ――で昼寝など。いったい何を考えているのか。 青年は一頻り笑った後で、漸く笑いが収まると、凝り固まった身体を解す為だろう。ぐっと腕を伸ばして伸びをした。それから腰を上げると、パンパンと、軽く服についた埃を叩き落とす。 「じゃあな」 青年は軽く挨拶を一言。サツナの元から去っていった。 後に残されたサツナは未だ、呆気に取られたまま動けずにいた。 なんだか妙に胸を叩く人物だった。こんな風にびっくりさせられるのは初めての経験だ。 最後に振り返り見せた青年の、悪戯好きそうな笑顔が脳裏から剥がれない。 これはいったいなんなのだろう。 サツナは無意識に、その頬に手を当てて、しきりに上下に擦っていた。ただただ意味も成さずに。青年の去った方角を見つめ、立ち尽くしていた。 「婚約者っておまえだったのか」 マクドール邸にて飛び込んできた声音に、サツナは身体がびくんと弾んだのを自覚した。声の発せられたほうに思わず振り向けば、そこには紛れもない、あの青年。 サツナはアクアマリンの美しい瞳をいっぱいに見開き、言葉も出せずにその姿を見つめてしまった。 楽しげな笑みを浮かべて一歩一歩階段を下りてくる青年。一歩一歩己へと近づいてくるその姿に、期待に胸が膨らむのが分かった。 その理由は知れない。 こんな風に胸の高鳴る思いなど、初めてのことなのだから。 「俺はテッド。よろしく。お姫さま」 揶揄するように云われたのに、ちっとも気にならなかった。いや、気にならないのではなく、気にする余裕がなかったのだ。 サツナの眼前で歩みを止めた彼に、見入っていた。 差し出された手に気づき、慌てて返そうと腕を伸ばしかけたときだった。 「テッド。僕の婚約者殿に失礼を働かないでくれよ」 呆れと笑い混じりの別の声があたりに響いた。テッドと同じ頃の青年が、柔らかな笑みと共に階上からサツナたちのいるホールの様子を見やっていた。 黒髪に黒い瞳。 誰だとサツナがいぶかしんだのとほぼ同時に、テッドが声を上げた。 「レイ!」 「…レイ?」 「はじめまして、サツナ姫。お会いできるのを、楽しみにしていました」 目の前までやってきて優しげな微笑を浮かべる青年は、テッドよりもよほど紳士的で、優雅で洗練された立ち居振る舞いを見せた。彼――レイ・マクドールこそが、サツナの真の婚約者なのだ。 そのことに――聡明で状況分析力に長けるサツナにしては、それはとても珍しいことに、漸く――思い至ったときに、サツナを襲ったのは、意外にも『失望』であった。まるで世界が青褪めていくような失望に全身が犯されていく。 サツナにしてみればこんなことはそれこそ想定外なのだ。まさか、出会った瞬間に、相手の正体に失望を覚えるだなんて。 それも初めての。 思えば、サツナはテッドに出会ってから、初めてばかりに襲われている。 目の前ではレイとテッドが楽しげに会話を交わしている。その様子でサツナは全てを悟った。おそらくこの二人は友人同士なのだろう。それもかなり気心の知れた。 知り合った経緯などは知る由もなかったが、なぜだろうか。サツナはそんな二人の様子を目にすればするほどに、羨望と嫉妬が胸中でもやもやと膨れ上がっていく。その全てが、テッドと楽しげに会話を交わし、彼に絶大な信頼を寄せられていると分かるレイへ対してのもの。何よりも勝るのは悔しさだ。 サツナは拳を握り込んでいた。身体が震えるほどの悔しさも初めてなら、それを堪えることも初めてのことだった。 悔しい。 なぜ、彼の――テッドの前にいるのは、自分ではないのだろうか。 どうしてそう感じるのかさえ、このときのサツナには分かるはずもなく。しかし、元々自分の思う通りに生きてきた彼女には、そう思う理由など必要のないものだ。 何故こうしたいのか。何故そう感じるのか。それよりも。 こうしたい。こう感じた。 そのことの方が断然大事で、そのことこそが重要だ。そしてそれを抑えないことこそが、今までの彼女のすべてだったのに。 今、彼女は堪えている。 何かどうしようもない、心の深奥から湧きあがる感情に襲われ。その欲望のままに動き出したいこの身を、それまで培われてきた常識を判断する力が理性を動かし抑え込んでいる。 そしてサツナは感じている。 彼のために。目の前の彼への思いのために、本能が理性を立てている。 彼を求める本能が、自分を抑え込めるために、理性に一歩を譲り、その力を持って自らを抑えつけるようにと懇願している。 こんなにも切なくて泣きたくなったのは、初めてだった。 数日が経った。数十に日かもしれなかったが、サツナにとってはどちらもさして変わりなかった。 正式な婚姻は、現在グレッグミンスターの外れに建設中の館(やかた)が建てられてからの予定だ。その館はレイとサツナの新居としてのもので、一年の中でもっともグレッグミンスターの美しい季節――春の盛りに完成予定だ。 それまで、サツナは婚約者であるレイ・マクドールの生家であるマクドール邸にて、赤月帝国での、曳いてはレイ・マクドールとの生活へ慣れるべく、グレッグミンスター入りしていたわけである。 一般市民が思い浮かべるそれは、とても甘い生活だ。 新婚前の、婚約者同士のひと時。恥じらいながら、お互いのことを知り、深めていく生活。 今まで遠く離れて暮らしていた、運命付けられた人。それが婚約者。ずっと思い焦がれてきたい相手との触れ合いは、少女をより華やかに染め、少年をより逞しく強くするだろう。 それもありだろう。 残念ながらこの二人の間にあってはそんな世間の夢も泡と消えるが。 サツナはまったくそういう――異性に仄かな恋心を抱き、恥じらい、頬を染めてはにかむような――タイプではない。そもそも彼女はどこにいても自分を崩さぬ自信があり、その自信は正しかった。 群島から赤月帝国へと居住を移して、事実、サツナは何一つ不自由しなかった。それこそ生活習慣の違いも、食についても、気候の違いにさえ。 周囲に見知った、気心の知れた人間が誰もいない――サツナは自分がまったく困らないと判断し、群島から付き従ってきたものたちを返した。彼らの方が、故郷を思いホーム・シックになるだろうと感じたからだ――にもかかわらず、彼女の精神には一片の欠損も見られなかった。 レイはといえば、サツナが第一印象を感じたとうりだ。紳士的。 彼は気遣う。サツナに対して、精一杯の配慮を忘れない。 その瞳を見て、サツナは彼が申し訳なさに心を痛めていることを悟る。その理由など分かりきっていた。 それはサツナに対しては無用の長物だ。レイの気遣いも、レイがサツナを最愛にできないことについても。レイがサツナに罪悪感を感じる必要は一切ない。けれどわざわざそれを言ってやることなどしない。彼は、いつもテッドと二人でサツナの前にいる。そのたびに、サツナはレイに対して苛立ちを覚える。だから。 そう。サツナはレイと二人きりにならない。いつもそこにはテッドがいる。 誰がどう見てもお邪魔虫以外の何ものでもない。 そしてとうとうサツナがそれを指摘した。なんだかとても素敵なことと、再びの失望を抱えながら。 「あなたはレイの邪魔をしているんじゃない。僕の邪魔をしているんだ。僕がレイに近寄るのを妨害してる。でも、それはあなたが僕をどうこう思っての行動ではなくて、おそらくレイへの援護なんだ。君達の狙いは、僕がこの婚約を破棄したいと申し出ること。違う?」 サツナは小首を傾げなかった。真っ直ぐにレイとテッドへ視線を向けている。 せめてテッドの目的がレイの邪魔をすることであったら、サツナの心はかつて感じたことのない喜びに満たされる可能性も見出せたのに。 「おそらく、レイには他に心に決めた人がいる。そうだろう?」 今度は小首を傾げて訊ねた。あまり理解できない心の動きだったのだろう。 サツナの心の機微は鈍かったが、サツナは他人の心の機微には敏(さと)かった。だからといって、そういった心理を全て理解できるというわけではない。理解が出来ないが、悟ることは出来る。それだけのことだ。 目を見合わせて無言でどうしようかと交わすレイとテッドに、サツナは肩を竦めてみせた。そして彼等の肩の荷を減らしてやる言葉を吐く。 別にそれを目的として放った言葉ではなかった。彼女は基本的に他人を気遣わない。 「いいさ。でも、別にこんなことをしなくても、君が一言、『嫌だ』と云えばそれですんだのに。どうせこの話はこちらから持ち込んだんだろう? それなのに僕のほうから断るだなんて、逆に申し訳がない。君のその優しさに対しての世間の評判を落としても悪いし。ああ、別に女性を立てようとか考えなくていいよ。むしろ人当たりのいい君よりも、僕が三行半を突きつけられるほうがずっと世間は納得する。父や群島の人々の懸念が大当たりするだけのこと」 婚約者にそれを破棄された。そのことは、サツナの経歴にも、心にさえも、一切の影を落とさないと告げる。 顔を見合わせてて困惑しあうレイとテッドであったが、先にあっさりと納得してそれらを受け入れたのはテッドだった。どさりと身を投げ出すようにソファに背を預け、サツナの次に投げ掛けられた言葉に愉しげに瞳を輝かせた。 「それで? レイの思い人って誰なんだ」 「おっ、気になるか?」 「テッド!っ」 「別にそうじゃない。ただ不思議なだけ。レイほどの身なら、躊躇う理由なんてない。僕のことが邪魔だったとしても、それはもう解決済み。そもそもそのことには大して悩んでいなかったような気さえする。君が憂いてる理由は他にある」 慌てるレイのことをまるっきり無視してサツナは分析を語る。そんなサツナの適確な分析に、テッドはやはり瞳に愉しげな色を乗せて口端を吊り上げた。 「ご名答。こいつは身分違いの恋に思い悩んでるのさ」 「身分違い?」 赤月帝国は群島よりも身分制度がしっかりとしている。名門貴族のマクドール家の嫡男が身分違いと悩む。 「レイの性格なら、市井の娘を娶っても絶対に護るだろ。この家の人々のことなら僕も多少なりとも理解した。そんな身分さを気にする人間はいない。憂い、悩まなければならないほどの相手。どこの国の王女にでも惚れたのさ」 サツナの弾き出した答えに、今度こそテッドは爆笑した。一人掛けのソファの上で腹を抱え、両足で空(くう)を蹴り上げるほどの爆笑。 そんなテッドをたしなめるように、レイが怒り交じりにその名を呼ぶが、テッドは取り合わない。 目に涙まで浮かべて、親友の秘密をあっさりと暴露した。 「あー、おかしい。…こいつが惚れた女の名は『ホノカ』」 テッドの言葉に、サツナは思い当たる節があって首を傾げて訊ね返した。 「ホノカ? 確か、デュナン国王。最近即位したばかりの女王だ」 「そうそう」 サツナの言葉にテッドは頷く。サツナはまたも小首を傾げた。 デュナン国。赤月帝国の北に、デュナン湖を南北に分けて二つの国がある。北にハイランド王国。南にはデュナン国。この二国は長年争いが絶えず、デュナン国は南にも赤月帝国という敵を抱えていた。 最近になってデュナン国とハイランド王国は和睦を結んだというが、相変わらずデュナン国と赤月帝国の関係は最悪といっていい。どちらも国境線を譲らず、小競り合いは現在も続いていた。 それがレイの憂いの理由か。しかしとサツナは思い至る。その疑問をそのまま口にした。 「あれ? でも、彼女はデュナンに武術を習いに来ていた縁で、ハイランドの第二皇子、ジョウイ・ブライトと恋仲だとかって聞いたけど」 「ジョウイは確かにホノカの幼馴染だけどな。あいつはあいつで別に相手がいるさ。ジルっていって、ハイランドの貴族のお姫様さ」 「ふーん」 はっきりって、サツナにはまったく興味のないことであった。 「それで。どうしようか」 「どうするって?」 「テッドさんはレイの協力をしてた。僕も、そうしたほうがいいのかな?」 首を傾げた相変わらずの能面で、サツナは二人に提案した。 |
だって瞬間に。一切の理由など不要として。 この全てがどうしようもなく惹かれてしまう。 抗えない、これほどの強い力、いったい他に何があるっていうんだ。 |
talk |
書いても書いても終わらない…! どうしよう。オチが見えなくて困った。たぶん続きます。次はホノカも登場するはず…。 この裏部屋は管理人の趣味が本当に凝縮されていると思います。またやりましたよ、女体化。大好きです。4主の名前を表と別にするべきかな?…と、ちょこっとだけ迷いましたが、私の中では女体化下4主は表の4主と基本的に同じキャラだったので、同じ名前『サツナ』を使用しました。ちなみに家族ものも大好きですが、幻水では父母にテッドとホノカ。兄妹にレイとホノカがすでに家族として出来上がっているように、私の腐った目には見えているので、子供は生まれないかもな〜…とか。 ご意見ご感想お待ちしております。_(c)2007/01/12〜14_ゆうひ。 |
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