明るく笑う君が
知らなかった
それを知ったとき
それに気がついた時
酷く
自分が小さく思えた
自分のことを不幸だと思ったことは決して無い。 だからといって幸せだとも思っていないけれど。 自分を自分で憐れむのは嫌だった。 強くありたいと願ったし、そうあらなければならないとも思ったから。 もう自分の心は渇いていて。 興味をそそる人間なんて誰もいなくて。 人付き合いだとか…そんなこと、考えもしなくて。 ふとして目に入ったのはある日。 太陽が眩しいほどに輝く昼下がりのことだった。 馬鹿みたいに笑って、馬鹿なことをしている奴が一人。 やけに眩しいと思って目を細めれば、そいつの髪が金色に輝いているからで。 青い瞳は楽しそうで。 (バカか…) そう胸中で呟いて、その時は終わった。 その時は思った。 そいつは、自分とは絶対に違う存在だと。 ただのバカなのだ。 馬鹿みたいに笑って、馬鹿なことをしている。 自分とはまったく違う存在。 だって…。 (何が楽しいんだか…) 彼は、あんなにも楽しそうに笑っている。 太陽の子供なのだ。 向日葵が良く似合いそうだと思う。 光る髪と空色の瞳。 白く健康そうな肌。 そして笑顔。 (何が…) いったい何が彼をあんな風に笑わせるのだろう。 その時はそれだけ。 心に何かがちくりと刺さったような。 小さな痛みが走ったような。 心の中に何か知らない物が生まれたような…。 けれど知らないから。 分からないから。 そのまま気がつかないふりをした。 だから知らなかった。 あいつは、いつも笑っていたから。 きっと。 友達とかいう奴がたくさんいて。 いつも人に囲まれていて。 父親とか母親とか。 大切な…家族が傍にいて。 馬鹿なことして馬鹿みたいに笑って。 そうして帰れば、暖かい人達が待っているのだろうと。 かってに思い込んでいた。 みんなに好かれて。 みんなが好きで。 だからこそ、あんな風に笑う事ができるのだと。 そう思っていた。 それは偶然だった。 いつもよりも少し遅い時刻。 ソラが紅くなる頃。 (…あいつは……) 見えたのは赤に染まりオレンジに輝く派手な色。 見える後姿は髪と同じ色の服で相変わらず派手で…けれど何故なのか。 酷く寂しそうに見えるのは。 目を離せないままその後姿を視線だけで追いかけていた。 彼はいつもと何も変わらない。 (変わらない?) では、彼はいつも寂しそうだというのだろうか? 自分で浮かべた考えに、思わず顔を顰めた。 だって、彼はいつも笑っている。 ふと視線の隅に何かが写り…それは真っ直ぐと彼に向かって飛んでいく。 気が付いた時には…。 (?!) 彼の顔に当たっていた。 「痛ッ!」 彼の小さな声が耳に届いて、何故か体が動かなかった。 酷い衝撃を受けたかのように、足が竦んで動かなかった。 声も…出てこなかった。 彼は別に意にも介さないようだった。 何が自分に当たったのかも確かめない。 思わず彼の足元に視線を向ける。 そこには石が転がっていた。 人に向けられるには小さいとも大きいともつかないほどの大きさだった。 ただはっきりと云えるのは。 あれが当たって痛くない人間はいないだろうということ。 そのまま彼は歩き出そうとした。 (?なんで…) 疑問に思った。 誰かか投げなければ石はあんな風に飛んでこない。 なぜ誰も謝りに来ない? なぜ彼は石を投げていた人間に何も云わない? 捜しもしないのはなぜ? 「!」 彼が歩き去ろうとして…また石が飛んできた。 今度は彼の目に当たる。 一つ間違えば失明しかけないのに…やっぱり誰も謝らず、やはり彼は意にも介しはしなかった。 ようやく体が動いた。 まず動いたのは首だった。 右を左を見て、石を投げただろう人間を捜していた。 人はいる。 いくらでも。 ここは商店街だから。 誰も意にも介さない。 何事も無かったかのように歩き去る。 (なんで…) はじめて気が付いた視線だった。 彼に向けられる視線は、どこまでも冷たく…。 憎悪と侮蔑と…ありとあらゆる負の感情を混ぜたような、嫌な陰に満ちていた。 それから数日が経ち。 彼は相変わらず馬鹿みたいに笑っていた。 馬鹿なことをして馬鹿みたいに笑って。 何も変わらない彼だった。 周囲も何も変わらない。 あの時の…。 いや、今までと同じ、あのどこまでも冷たい視線で彼を見ていた。 気がつけば彼を見ている。 彼について知りたいと思う。 彼には自分が思い描いていたような友人は誰も無く。 家族は生まれた時から無く。 相変わらず、彼には石が向けられていた。 (なんで…) 何で彼はあんなにも笑っていられるのだろうか。 太陽のように。 向日葵のように。 夏のソラのように。 どこまでも明るく―――。 いつかこう思うようになっていた。 彼の笑顔は、まるで何かを耐えているようだと。 痛みに耐え、なんでも無いことだと振る舞う為の笑み。 必死でどこかかに縋りついているような笑み。 どこかから這い上がろうとしているような笑み。 負けまいと。 自分を奮い立たせているような。 自分を叱咤するような笑顔。 笑顔を作る事で、彼は何かから必死に耐えている。 それはある木洩れ日の中でだった。 樹の根元で眠る彼を見つけ、木の葉の間から零れる日の光にきらきらと輝く金の髪に目を細める。 ふらふらと。 まるで火の粉に誘われる虫のように、その眩しい光に誘われて足が動いていた。 酷く綺麗だと思った。 改めて気が付く事でもないのだろうが…。 もう一つ。 近くで、こんなにも近くで見て初めて気が付いたこと。 その肌には、いくつもの傷がある。 それは忍びとしての修行なんかで付いた傷ではない。 違うのだ。 何がどう・・・といわれると説明できないが。 それは確かに違っていた。 ふらふらと。 まるで火の粉に誘われる虫のように、その柔らかそうな口元に口付けていた。 何故そんなことをしたのかなど分からない。 ただ、凄く綺麗だと思った。 まるで、虫が火の粉に煽られるように。 きっと、捕らわれてしまったのだ。 強く眩しく。 けれど何故こんなにも寂しいのだろう。 美しく、明るさの源のはずなのに…その闇に溶けてしまいそうな。 儚く。 「何してんだってばよ…」 彼が目を開く。 青い瞳はやはり綺麗で…。 「別に」 そう答えるだけ。 「あっそ…」 そうすれば彼はまたその瞳を閉じるから。 「ナルト」 彼の名を呼んだ。 その、青い瞳をまだ見ていたいと思った。 その青い瞳に自分が写っているのを…まだ見ていたい。 「なんだってばよ…サスケ」 そうすれば彼はその閉じかけた瞳を開いて自分を見るから。 思わず彼が自分の名を呼んだことに胸が激しく脈打つから、酷く五月蝿くて…その音が彼にも聞こえてしまうのではないかと。 必要のない心配をしたりした。 「……」 「?いったいなんだって云うんだってば…」 彼は僅かに顔を顰めたようだった。 コロコロと良く変わる彼の表情。 彼の表情が変わる度に胸が踊る。 「…変な奴……」 何も云わずにいると、彼はそう云ってその瞳を閉じた。 溜息と共にもたらされたその台詞に、思わず苦笑していた。 (ほんとにな…) 何でこんなことをしているのだろう。 この気持ちはなんだろう。 名を付けてしまうのは簡単な気がしたが、今はあえて名を付けようとは思わなかった。 ふわふわと暖かい。 木洩れ日の下のようなその心地良さは、こうして始まったばかりだから。 まだ、このままふわりとした。 羽根のようなやわらかな温かみの中で。 |
君はいつも笑っているから
気が付かなかったんだ
その笑顔の奥にある
君の強くも儚い
その焔のような
ともすれば闇に溶けてしまいそうな
その美しさに寂しさに
明るく笑う君は
傷を笑顔を持って乗り越えようとする君は
きっと
誰より強く美しい
明るく笑う君が
本当に笑えるように
そうなって欲しいと思う
もし一つ叶うのであれば
できれば君に心からの
耐えるのではなく
誤魔化す為ではなく
心からの幸福によって生まれる笑顔を与えるのが
自分であって欲しい
そう思う
心から
明るく笑う君が好き
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水崎様!お約束の例の物を急に送りつけます。
迷惑ですね!ハイ!
分かってるんだけど…一応書いたからさ。
サスナルです。
全然名前も台詞も出てこないでどっちも偽物っぽいけど、
そこは笑って許してねv(爆)
っていうか煮ても焼いてもいいです…。
こんな物を贈りつけてごめんなさいです。
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