+ 境の刻 +















笑うように
怒るように

君に

泣いて欲しいと思う






























 君はとても良く笑う。
 そして君はとても良く怒る。
 嬉しい時に笑う。楽しい時に笑う。
 嫌な時は起こる。拗ねる。
 悔しければ必死で努力する。
 君はとても分かりやすい。

 だって、君はすぐに感情を態度で示すから。

 けれど僕は知らない。
 君が悲しみと辛さに泣く姿を。

 君は良く笑う。
 君は良く怒る。

 楽しい時。
 嬉しい時。
 辛い時。
 苦しい時。

 すべての感情を、君は態度で示す。

 僕は、そんな君を見ているのが好きだ。
 何も語らない僕の横で、まるで太陽のように笑う君が好きだ。
 僕の言葉や態度の一つ一つに、君がたくさんの反応を返してくれる。それがとても嬉しい。
 嬉しくて笑うと…君は怒るけれどね。

 君は他人(ひと)のことですぐに泣く。
 誰かの哀しみにすぐに泪を流す。憤り、怒る。
 僕の時もそうだった。
 僕は…それが、とても嬉しかった。

 そして、恐ろしかった。

 誰かのことばかりで、君は時に君自身のことを忘れてしまうから。
 君が消えては、この世にはきっと意味がない。
 誰かのことを思うことのできる君がこの世から消えるのは…きっと、だめなんだ。

 けれど。
 僕は知らない。

 君が自分の悲しみに素直に泣くところを。

 君は良く笑う。
 良く怒る。
 たくさん、たくさん。自分のことを話してくれる。
 自分の感情に素直で、自分の思いをたくさん語ってくれる。
 それに嘘は無い。

 別に僕にだけというわけではないけれど。
 それが少し悔しいけれど。
 けれど、君のそんな姿を見ているだけで楽しい。

 もうとうの昔に凍てついてしまったと思った心が…暖かい日差しに触れたように溶けていく。

 気が付くと、僕の口元は笑みに形作られていて。
 君を見ているからだと、ふとして気づかされる。

 だから気が付いた。
 君の笑顔を見て、君がたくさん怒るのを見て。
 それと同じくらい、君が自分以外の誰かのために泪を流すのを見て。

 君は、自分の哀しみだけは表に出そうとしないから。

 笑いたければ笑えばいい。
 許せぬことには怒ればいい。
 悲しければ泣けばいい。

 僕は思う。

 君が楽しくて笑うように。
 憤って怒るように。
 誰かの痛みを知って泪を流すように。

 自分の心の痛みにも。

 素直に。
 泪を流せるようになればいいと。
















 それは夕暮れの日のことだった。
 赤く染まる時間。
 まだ幼い僕は、友達と遊んで家に帰ろうとしていた。

「またな、サスケ〜」

「ああ」

 手を振って家へと帰っていく僕。
 公園を抜け、草原を抜け。
 家に帰っていく。

 駆ける僕の前には広い道。
 広く長い道。
 朱(あけ)に染まった道。

 道。

 木が植えられていた。
 何本も。何本も。
 みんな赤く染まっていく。

 一人。

 それとは違う朱。

「何してるんだ?」

 見たこともないその子に、僕は声をかける。
 一瞬びくりと肩を震わせて、その子は恐る恐る振り返る。
 びっくりした。

 綺麗な青。
 蒼い瞳に、夕焼けの朱が混じって…。

「もうそろそろ帰らないと、母さん達に怒られちゃうぜ」

 心配かけちゃうほうが先かな?

 朱(あけ)。
 すぐに暗くなる一瞬のまどろみ。
 境界。

 朝のまどろみ。
 夜のまどろみ。
 一瞬の境界の刻。

「……ありがとう・・・だってばよ」

 声を掛けてくれて。

「別に。いつまでも遊んでたいよな」

 楽しい時はあっという間。
 時がたつのをを忘れてしまうほど。

「うん…楽しいってばよ」

 毎日が楽しいよ。
 きっとこれからも楽しいよ。
 いつか…きっとそう思える日が来るよ。

 だから。

「「バイバイ」」

 僕らは手を振って分かれた。
 別々。

 決して云わなかった。


「またね」


 だなんて。
 そんな言葉を交わさずとも、遊びに出かけよう。
 そうすれば、人はいくらだって周りにいる。
 一人になるはずがないだろう?

 だから。
 遊びに行こう。
 また明日も。

 明日は、今度は君がいるかもしれない。
 いなかったら、明後日にいるかもしれない。

 ……そういえば。
 今日は、誰と遊んだかな?





 遊びに行こう。

 君と。
 明日も今日も同じ。
 いつもくり返し。
 繰り返して繰り返して。

 そして少しずつ。
 時間(とき)は過ぎていく。

 だからそう。
 明日も同じ。
 今日と同じ。
 いつも同じ。

 ねぇ。
 本当に、明日も同じ日が来るの?







 月。
 三日月。
 まるで嘲笑うように。

 雲。
 満月。
 染(そ)まる。

 朱(あけ)に。

 星が一つ流れた。







 そのときの君のことなど覚えていない。
 君も、きっと覚えていない。

 幸せと哀しみ。
 身が引き裂かれるほどの傷(いた)み。

 心が壊れるほどの衝撃。


 それは境界。


 幸福と不幸。
 朝と夜。
 路(みち)。





 それは全ての境界の刻(とき)。


 だから何もおぼえてないよ。


























君の、君の為の泪は
いつも

抑えつけられたまま

僕は思う

笑うように
怒るように

君が

自分の為に泪を流せばいいと


哀しみを抑えることは
淋しさを身の内に閉じ込めることは

……以外と辛いと知っているから






















そこでは月が朱かった




















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あとがき +------------------------------------------------



 水崎さまに捧げるサスナル小説。所要時間20分。
 思い浮かんだのは冒頭部分だけ。すべてを書ききれていない。
 というか、サスナルじゃないですね、これ。
 名前の一つも出てこない〜(爆)
 本当はいれようと思ったんです。もう少しなんか!……でも時間もないし…ぶっちゃけて云えば何入れようとしてたかわからなくなったという…(滝汗)
 ああ…タイムラグが(←なんのこっちゃ)
 最初と真ん中と最後を書いた時間があまりにもずれてて上手く噛合ってないです。

 最後に付け加えたのは子供でサスナルやってみたかったから。でもやっぱり訳わかんない。サスケの言葉遣い、初めもっと幼かったのですが、直しました。
 ただでさえ分からないのに、更にわからなくなるから。

 こんなん送りつけても良いのでしょうか?
 そして自らのHPにもUPしてしまうという…(汗)
 ナルトって辛い時の泪けっこう抑えつけてたりしてたことがあったような気がし…たです……。どうなんでしょう?

 水崎さま!
 本当にごめんなさい!!返品もちろん可です〜。



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