恋人との生活




















大好きな君と

いつも一緒にいたい

いとおしき君よ

いつもすぐ傍にいたい

我侭ですか?


























 ふっくらとした身体に、すらりとした肢体。
 劉鳳はやわらかなその身体を抱き締めていた。
 暖かな、女性特有の香りが心地良い。
 そこにいるだけで安心でき、穏やかな気持ちになれる。

「劉鳳〜」

 自分を呼ぶ声に劉鳳は目を開いた。
 腕の中にいる存在は自分の腕から逃れようと、もがくようにしている。

「苦しい!体痛い〜だるい〜!!」

 もごもごとくぐもった声で云いながら、頭をぐるんと巡らして劉鳳を見るのは、キラキラと光る金色の瞳。
 睨まれているにもかかわらず、劉鳳の顔は緩む。

「すまなかった…」

「謝ってすむか!」

 視線を反らして云えば真っ直ぐと怒鳴られ、しかしやはり顔が緩んでしまうのを止められない。
 大好きな恋人に怒鳴られてもただ嬉しいだけである。
 しかもこの状況では…。

 時刻は昼。
 起きたのは朝。
 やむにやまれずもう一度寝るはめになったが…。

 起きた時、劉鳳はそれまでの疲れを全てすっとばしており。
 逆にカズマは今までで最高の疲れに見舞われていた。

 ベットの中。
 休日の恋人同士。

「腹減った〜!なんかメシ〜」

「…分かった」

 云うカズマに、劉鳳は溜息と共にベットから起き出した。
 簡単に身支度を整えてから食事の仕度に取りかかる。
 トーストにミルク。
 あまりにも簡単だが、すぐにでも準備出来る物はこれしかない。

「カズマ!」

 食事の用意をしてからカズマを呼ぶ。
 気の抜けたような返事が返ってきて…。

「カ、カズマ!」

 劉鳳は噴き出した。

「ん?どうしたんだよ、劉鳳」

 カズマは不思議そうな瞳で劉鳳を見た。
 その表情は子供の頃(つい昨日まで)のものと何一つ変わりがないように見える。

 劉鳳が慌てたのはカズマの格好のせいだ。
 素肌に劉鳳のワイシャツ一枚。
 それだけ。

「カズマ…きちんとした服を着てこい」

「服なら着てんじゃん」

 劉鳳の言葉に、カズマは唇を尖らせて不服そうに云った。
 いったい何がいけないというのか、カズマにはまったくもって分からない。

「劉鳳に買ってもらった服、全部小さくて着れねぇんだもん」

 ――せっかく劉鳳に買ってもらった服だから…もっとたくさん着たかったけど…。

 好きな人からの贈り物を身に着けたい。
 そうカズマは俯いて云う。
 一晩であれだけ姿が変われば仕方のないことである。

 思いがけないカズマの言葉が嬉しくて――もちろんそれだけではなかったが――劉鳳は顔を赤くして俯いた。

「分かった…。とりあえず俺のズボンを適当に履いておけ。後で…また服を買いに行こう」

「おう!」

 嬉しそうにそう返事を返してから、カズマはいったん寝室へと戻って行った。

 次に戻ってきたカズマは男物ではあるが決して見られない格好ではなく。
 安心と残念なのと複雑な気持ちで劉鳳は共に昼食をすませた。











 午後は約束通りお買い物。
 幾つかお店を回ってカズマのために服を揃える。
 女性物は分からないので、カズマの好みと…後は店員に幾つか尋ねて選んでもらったものにした。

「なぁ、またあの甘いの買ってもいいか?」

 カズマが劉鳳を覗き込むようにして上目遣いに訊ねれば、劉鳳に断われるはずもない。
 赤くなった顔を抑えてカズマから視線を反らせてから一つ頷いた。

「ああ、かまわん」

 云えばカズマは嬉しそうに笑うから。
 劉鳳はさらに顔を赤くした。

 甘い甘い。
 香るお菓子を買って帰る。

 帰ったら一緒に食べましょう。

 ソファに座って。
 二人並んで。














 次の日。

「駄目だ!」

「やだ!!ぜってぇ行く!」

 朝から劉鳳とカズマは言い争っていた。
 原因は些細なこと。
 仕事に出かける劉鳳にいつも通り付いて行こうとして止められたのだ。

「何でダメなんだよ!いつも一緒に行ってるんだから今日だっていいじゃねぇか!!」

 HOLDの人間も随分とカズマには良くしてくれている。
 明るく屈託ない笑顔で純真に笑うカズマの存在は、どうしてもぴりぴりとしてしまう感のあるHOLDやHOLYを和ませてくれるのだ。
 カズマの持つ特別な雰囲気は、どうしても人を惹き付ける。

 しかし。
 市街は常識の中に存在しているのだ。
 今まで五、六歳の少年だったカズマがいきなり十五、六の少女になって現れたらちょっとした騒ぎではすまない。

 …実際、そんなものは名前を変えてカズマの姉とか親戚とでも云えば良いのだが…とりあえず劉鳳はカズマにそう云って説得しようと試みた。

 説明が面倒なのもあるが、何よりも女性としての自覚のないカズマを外へ連れて行くことが不安で仕方がないのだ。

 普段とてカズマに話し掛ける者を見る度にカズマが心配でやきもきしているというのに…(ちなみに劉鳳は仕事中でカズマの傍にいられない)。

「……」

 ぶすっとした不満気な様子で、それでもカズマは云い返すことが出来ないようだった。
 それがますます気に入らないのだろう。

「いったいどうしてそんな付いて来たがるんだ?」

 劉鳳は溜息と共に吐き出した。

 確かに家で一日中一人でいるのは退屈だろうが、しかしカズマはテレビを見るのも好きだ。
 HOLYでの仕事を劉鳳がこなしている間は――というよりも、ほとんどの時間はそうなるのでカズマはたいてい一人でテレビを見たりして過ごしている。

 皆がカズマのことをかまいたがることは確かだが、皆仕事に来ているのだ。
 そうそう遊んでなどいられない。

「・・・だって、一緒にいたいんだもん」

 少しでも長く。
 少しでも近くに。
 大好きな人と。

「劉鳳、あっち行ったら俺じゃなくて他の奴らとばっか話してて俺のことなんか忘れちゃうんだ」

 唇を尖らせたまま。
 拗ねたように云うカズマに、劉鳳は顔を真っ赤にして。

 劉鳳から顔を反らしているカズマには、そんな劉鳳の様子は窺がえない。
 劉鳳の反応をただひたすらに待つだけだ。

「……」

 共に言葉なく。
 暫らくの沈黙。

 沈黙に耐え切れなったのはカズマが先であった。
 チラッと劉鳳の様子を窺がうように盗み見る。

「…劉鳳?」

 呟けば劉鳳はカズマをそっと抱き締める。
 カズマはわけが分からずその抱擁を受けていた。

「カズマ…大丈夫だ」

 劉鳳が云う。
 いつだって、考えているのは君のことばかり。

「うん…」

 カズマが頷く。
 そっと劉鳳に抱きついた。
 その胸に顔を埋める。











「りゅ、劉鳳!!その子、誰なの?!」

 HOLY専用ロビーにカズマを連れて入ってきた劉鳳に真っ先に声をかけたのは、青い髪の少女シェリス=アジャーニ。

「カズマだ」

 劉鳳はそれだけを答える。

「な!だ、だって、カズマは男の子のでしかももっと小さい…」

「昨日朝起きたらこうなってたんだよ」

 シェリスの言葉を途中で遮って答えたのは、今度はカズマであった。
 劉鳳の腕に自分の腕を絡ませ、シェリスに見せ付けるようにして歩き去る。

 シェリスは呆然とそんな二人を見送った。
 もはや言葉も出ない。
 というか何がなんだか…。












 それから暫らくして。
 HOLYに新しい隊員が加わった。











 結論。
 劉鳳はカズマに甘いのだ。

 そして。
 どうやらカズマには小さな嫉妬心が芽生えていたらしく。
 けれどまだまだ子供のカズマ。

 放っておけばすぐに拗ねて。
 甘い物には弱くて。
 服装はちっとも気にしないから。

 結局自分のすぐ傍において置くのが一番安全だという結論に達したのも事実。

 劉鳳とカズマは今日も今日とて二人の世界。



























大好きな君

近寄る全てに不安が募る

向こうを見ないで

自分だけを見て

我侭だとは想うけど

まだ、僕と君は始まったばかり

だから不安

ずっと、傍にいよう























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「想人との生活」の続編。
今度こそ本当に終わりです!!
とか云いつつ続き書いたりして?(笑)
なんか未消化な部分多々ありますが腐り頭の人間の書いた
戯言として笑って許してくださったら嬉しいです。
そして今回も無駄に長いです。
HOLYでの様子。
本当はもっと書きたいけど…そういうの苦手みたいです。
誰か替わりに書いてくれ〜!!(←他力本願/爆)
ワイシャツ姿のカズマ。
女の子の方も子供の方も見たいです。絵で(腐)
誰か描いてくんないかな〜
またもや他力本願〜って描くか…自分……(遠い目)
読んで下さった方いましたら心より感謝申し上げます。
いやもう本当に…。
感想いただけたら嬉しいです(切実)



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モドル