家族の生活
--昼の風景--






















ぽかぽか
おひさま
かおをだす

ぬくぬくひなたで
きみはどこ?



























「ふあぁ〜。う〜ん…オレ、暇だからトレーニングルームに行って体動かしてくるわ」

「えーー!!じゃあ、らいもいっしょにいくー!!」

「あのなぁ…。もう一人でも平気だろ」

 劉籟が身を乗り出して云うのを、カズマは溜息交じりで疲れたようにして返す。実際に疲れているわけではなく、退屈しすぎて飽きている状態が続いているだけなのだ。

「まぁまぁ、カズマさん。劉籟ちゃんはカズマさんと一緒にいたいだけなんですから」

 劉籟が泣き出しそうに瞳を潤ませて俯き、慌てて水守が二人を取り成す。微笑に冷汗を流すその表情からは、劉籟が泣き出すのを心底慌てている様子が見てとれる。
 もっとも、劉籟が泣き出して慌てない者など、母親のカズマだけなのだが。

「まだ昼食まで時間がありますし、少し外に散歩にでも出かけましょう。劉籟ちゃんの気ばらしにもなりますし」

 ここでムリヤリ劉籟に勉強を続けさせるのは簡単なことかもしれない。けれど、と水守は考える。
 無理強いを強いることで、劉籟が学ぶという行為事態に嫌悪を抱いては仕方がない。

 子供は大人が思うよりもずっと多くのことを貪欲に、無意識に吸収していく。今、学ぶべきことは、後々の人格形成に多いに作用してくるものなのであり、その範囲に制限はないはずだ。
 子供にとってはすべてが掛け替えのない経験となる。

「う〜ん」

 まぁ、別にいいか。

 考えているのかいないのか。
 微妙な表情の後にカズマは水守の案を承諾した。

 かくして。
 カズマ、劉籟、水守の三人はHOLD本部近くの公園に散歩に出かけることにした。










「あー!やっぱ外は気持ち良い!」

「きもちいい!!」

 カズマが体をほぐす為に伸びをして云えば、劉籟もそれを真似る。
 水守はそんな親子の様子を、少し大人の位置から優しい眼差しで見た。優しい微笑が、極自然に洩れてしまう。

「みゃ〜」

「あっ、ミルさん」

 不意に聞こえた猫の鳴き声に、カズマは嬉しそうに顔を輝かせて振り返る。
 そこにいたのは真っ白な雌猫だった。名前は…ミルさんらしい。

「みゃ〜」

「おう!元気だぜ。今日はちょこっと散歩中」

「みゃ」

「うん。ガキも一緒vミルさんとこはもう一人立ちしたんだっけ?」

「みゃう」

 カズマとミルさんの会話は続く。
 その様子を、どこか困った表情で見守るのは水守だ。劉籟は尊敬と羨望の眼差しでカズマを見つめている。

 カズマが猫と話すのを見るのは、劉籟も水守もこれが始めてではなかった。
 始めて水守がその様子を見かけたとき、実は劉鳳に告げたのだ。
 そんな水守に、劉鳳は書類を読みながらさらりと返す。

「ああ、そのことか。あいつは元は猫だからな」

「まぁ、そうだったの」

「ああ」

「………」

 もはや冗談か本気かも分からない。
 カズマは感性が強いのかもしれない。動物と心を通わせる人間がいたっていいではないか。むしろ望ましい姿である。自分のペットと会話をする(してると思っている)人間はいくらでもいるものだし。
 水守はとりあえず追求をやめた。

「いいな〜。らいもねこさんとおはなしできるようになりたいなぁ」

「……」

 隣りで純粋に顔を綻ばせる劉籟に、水守はなんと云って良いか分からなかった。











 そろそろ昼食時だ。
 劉鳳は愛する妻と愛娘が居るはずのロビーにやってきた。
 二人の姿を捜す。
 と。

「劉鳳」

 名前を呼ばれた。
 聞きなれ過ぎた声。思わず顔がしかめられる。
 顔を向けるとそこには思った通りの人物。

「これから食事か?だったらたまには家族水入らずで」

 劉鳳の父。劉大蓮氏である。
 あたかも偶然を装っているその姿。だが劉鳳は確信していた。

「父さん……」

 わざわざ時間を合わせてきましたね。

「あっ、劉鳳のお父さん」

 劉鳳が何か言葉を発しようと口を開きかけた時だった。不意にエントランス側から声が響く。
 視線を向ければそこには捜し求めていた愛しい姿。
 いわずもかな。
 カズマ、劉籟、水守の三人である。

 カズマにとって劉大蓮は、いまだに劉鳳のお父さんどまりである。
 実はその意味を余り良く理解していないのかもしれない。

「おじいちゃんだ〜」

 次いで響き渡るのは甲高いかわいらしい声。
 かわいい孫――劉籟が走りよって来るのを、劉大蓮は顔を綻ばせて向かえる。

「ああ、カズマちゃんに劉籟。久しぶりだね。水守さんも」

「ついこの間も会ったぞ」

「あった〜☆」

「こんにちは、おじさま」

 三者三様。
 和気藹々。
 にっこり笑顔で御満悦の劉大蓮に放たれる冷たい言葉。

「さっさと帰ってください」

 はっきり云って邪魔だ。

 劉鳳だった。
 実の息子にこの言葉を吐かれるのは痛い。と思う。
 だがしかし。
 劉大蓮はこの程度でくじける男ではなかった。

「いいじゃないか。たまには、私も孫や嫁と食事をしたい」

 だいたい、劉鳳がカズマを自分に紹介したのは籍を入れてからじゃないか。

 まるで駄抱っこを思わせる様子で、劉大蓮は云った。
 目に入れても痛くないほどかわいい孫を抱いたまま。

 カズマは思う。

(でっけーガキだな)

 当たらずとも遠からず。

 そんなこんなで。
 これからお食事です。










 結局。
 劉大蓮氏に推し切られる(流される?)かたちで、家族でお食事。
 劉鳳はなんだかんだいってもまだお仕事が残っています。今は短い休憩時間。
 なので。
 お食事はいつもの通りHOLD内のレストランで。

「おいし〜」

「そうかい、そうかい」

 にこにこ笑顔で孫の食事風景を見つめるおじいちゃん。
 やはりここでも御満悦。

「でも劉鳳の作る飯の方が好きだぞvオレはvv」

「らいもとうさまのごはんすき〜」

「カズマ…劉籟……」

 劉鳳。
 感極まって泣きそうである。

 食事当番はもっぱら劉鳳の役目であった。
 カズマに食事は作れない。というよりも、もともと飼い猫であったカズマにはそんな概念事態がないのかもしれない。
 食事は用意してもらうものなのだ(でなければ各自で自炊)

 ちなみに。カズマは食事に限らず、掃除も洗濯もしない。家事一般のすべて何もしない。
 すべて劉鳳――もしくは時々来るお手伝いさんがやる。
 劉籟も時々お父さんのお手伝いでする。

 劉鳳。
 仕事もして家事もして。
 妻と子供をこれでもかというほど愛してて。
 もしかして理想の夫?

 そして世間ではどう考えてもダメ妻カズマ。
 しかし。
 ここでは誰にも責められない。というか、責める人がいない。
 みんなに愛されてるし。

「かあさまのつくるごはんはだいすき〜」

 そんなカズマも時々食事を用意したりもするらしい。
 ということを匂わせる発言が劉籟から飛び出した。

「ほぉ。劉籟、お母さんはどんな食事を作るのかな?」

 おじいちゃんもぜひ食べてみたい。

 という劉大蓮氏のお言葉に、劉籟は満面の笑みで答える。

「ぱんにきいろいのとあかいのぬるの〜」

 つまりは市販のパンにハチミツやらバターやらジャムやらを塗ったもの。ということだ。

「あまくておいしいの〜」

 尚もにっこり笑顔の劉籟。
 この無邪気な子供を囲んでの会話を聞いていた人々は一様に、劉鳳の健気さに泪を流し、拍手を送ったそうだ(もちろん胸中で)

 とうの本人がそれを知ればさぞ不思議に思ったことだろう。
 彼はどこまでも家族を愛しているのだった。





























ぬくぬく
ぬくぬく

かぞくのぬくもり

あたたかい























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朝から続き昼の風景です。昼よりも前な感じです。
もう小説じゃないです。これ。
キャラ壊れてます。話し方とかあってます?
ギャグです。パラレルです。言い訳です。
うう。なんでこの話しシリーズ化してるんだろ?
こんなものでも読んで頂けると嬉しいです。
感想いただけたらもっと嬉しいです。
お付き合いありごうございます。大感謝です。でももうちょっと続きます。



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モドル