今だけは
せめて
今だけは
この腕に
抱かせてください
ただ強く抱き締めた。 きつくきつく抱き締めた。 人肌が。 そのぬくもりに…触れていたかった。 そのぬくもりが…どうしようもなく恋しかった。 シェリス=アジャーニ。 その少女の服を抱き締めて泣き叫ぶ劉鳳を見つめていた。 泣くことを――感情を素直に表に出すことを禁じた彼のその様子は、彼がそれまで抑え付けていた全てを解き放ったかのような。 全ての悲しみを込めて涙を流す。 哀悼。 それしかできなくて。けれど、それできっと十分なのだと思う。 その死を悲しむこと。 彼がそうして涙を流すこと。 彼女の為の行為。 それだけで、きっと彼女はいつより満たされることだろう。 彼に思われる。 彼の為に何かを成し得る。 それだけで。 彼は、今、彼女の事だけを思っている。 彼女だけが、今、彼の心を占めている。 どれだけそうしていただろうか。 いろんなことがありすぎて、もう時間の感覚なんて無くなってきていた。 劉鳳の嗚咽が小さな物になり、それから彼が顔を上げる。 自分を見つめてくるその瞳は、酷く頼りなげで。 だから、成すがままになった。 劉鳳はカズマに深い口付けを落とす。 貪るように。 その熱を、その息を。 全て奪い取るかのような、激しい口付け。 深く深く。 何度も口付けた。 強く強く抱き締めて、離さない。 カズマはそんな劉鳳の行為を甘んじて受け入れていた。 息が上がり、意識が保てなくなっていく。 もう、自分だけでは立っても居られなくて…カズマは劉鳳に凭れるように寄り掛かった。 大切な人を失った時。 つらく、悲しい時。 泣き叫ぶほどの衝動。 掛け替えの無い誰かが自分を原因として消える。 どうしていいか分からないその時に、人は人の肌を――そのぬくもりを求めてやまないと…知っていたから。 人のぬくもりが欲しい。 触れているだけでもいい。 触れてくれるだけでもいい。 誰かがそこに居てくれるだけで。 救われる。 そのことを知っていたから。 涙に濡れた彼の深い口付けを。 ぬくもりを貪るかのようなその行為を。だからカズマは甘んじて受けとめ、そんな彼を優しく抱き締め返してやった。 子供をあやす…母親の様に―――。 優しく、優しく。 その背を撫でてやる。 劉鳳から与えられる愛撫に意識が消えていく。 彼のその首筋に腕を回して、目を瞑ってその行為に耐えた。 洩れそうになる声を、歯を食いしばることで抑えれば、子供のような赤い瞳の彼はそれを解きほぐすかのように口付ける。 背中に当たる床がひんやりと冷たくて。 熱を持ち火照った身体を僅かにでも冷ましてくれる。 それが、紙一重でカズマの意識を保たせていた。 ただ抱き締める。 口付ける。 ――貪るように。 涙が零れた。 行為は酷く中途半端な物で…。 二人は別々の道を歩き出す。 酷く似通った、それでもまったく違う道。 それでいいのだと思う。 それぞれの道を。 自分一人で歩いて行く。 それが自分の生き方ならば、いったい誰に気兼ねするというのか。 だから、それでいいのだと思う。 |
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君が、僕の涙を蘇らせた |
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短いです。とっても…。最近スランプだ〜(前から?) スクライド「シェリス=アジャーニ」の回の感想を兼ねて書きました(兼ねられてない気がするけど…) シェリス〜ああ…なんかすっごい哀しいです。 ああいう一途で強い…純粋な子は結構好きです。 でもこんな話し書いてるし(汗)…っていうか無常とかに筒抜け?!という部分は忘れて読んで下さい(滝汗) シェリスは強くてほんとにいい子でしたが…ああ…瓜核と幸せになって欲しかった!!(←結局それかい) いや、劉シェリもいいんですよ(劉水よりは/汗) 劉カズ好きな管理人はその後カズマに云われて劉鳳が涙を流せたということにめちゃくちゃ悦っていましたが(爆) シェリスに翼が生えたとき、カズマとお揃い??とか少し怒りが湧いた心の狭い私を許して下さい(とても綺麗なアルターでした。シェリスの一途な心そのままに)。 |
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モドル