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いつもそばにいる
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いつも一人でいるけれど 別にそれが辛いわけではないけれど 時々 本当に時々 どうしようもなく 寂しくなる時がある |
その日、彼はいつものようにそうしていた。 夜の暗闇。 響く静寂。 どれもが彼を包み込み……やがて彼の姿を消してしまう。 そう思いさせるほどに夜は深く。そして静かで。 彼は…彼のその表情は酷く「無」だった。 どこを見ているのかなど分からない。 もしかしたらどこも見ていないのもかもしれない。 ぼんやりとした、光の無いその瞳。 光の無い…とは語弊がある。 彼のその瞳は月よりも美しい。 果てし無い時をじっと過ごしてきた命内包する宝石。 無機質で、けれど温かみのある色。 胸を突くように、けれど静かに佇むその光。 「琥珀」で出来た彼の瞳。 二つの眼(まなこ)は、彼が戦う時にのみ。 命を削る時にのみ覗き、今ではもう痛々しくも……一つの眼のみが覗く。 「なんで…こんなこと、すん…だよっ!……」 彼は云った。 泣きそうな。 泣きそうな、絞り出すような声だった。 切れ切れになるその言葉は小さすぎて。 実は大して響きはしない。 それでも、彼がその言葉を伝えたい相手には十分に伝わる。 「……劉……鳳…」 彼は相手の名を呼んだ。 つらく顔を歪ませて。 泣きそうな。 どこかで助けを求めているような声だった。 「お前を愛しているからだ。…カズマ」 劉鳳と呼ばれたその男は答えた。 カズマ。 それが彼の名前。 碧い髪は闇に溶けてしまいそうだった。 本来ならば強く射抜くようにあるその褐色の瞳は、今では静かに閉じられている。 まるで。 まるでこの腕に抱き込む彼の全てを感じるかのように。 静かに閉じられた瞳。 劉鳳は後ろから優しくカズマを抱き込む。 首元に顔を埋めるように寄せれば、カズマの耳元に劉鳳のやわらかな髪が触れ、カズマは夜風に冷えたその髪のひんやりとした感触に身体を震わせた。 「うそ…だ……」 カズマは云う。 その声は震えていた。 ぎゅっと。 まるで何かに耐えるように、何かを振り払うかのように、その琥珀の瞳を隠す。 閉じられた彼の瞳。 身体が強張っているのが分かる。 「嘘ではない」 だから劉鳳は返した。 すぐに。 迷いの欠片無いはっきりとした、けれど優しい声。 「……いらない…」 けれどカズマは云う。 泣きそうな。 けれどどこか虚ろな声。 「……」 「俺はいらない!」 突然カズマが叫んだ。 泣くような。 泣いているような悲痛な叫びだった。 涙は。 涙は流れていなかったけれど。 きっと、彼の心の中では流れている。 涙と一緒。 開いた傷口からは止めど無く痛みが流れ、閉じられた傷は消えることなく痛みを与え。 カズマは叫んだ。 だから劉鳳は、じっとその言葉に耳を傾けていた。 彼の身体を離さないように。 それでも優しく、護るように抱き込みながら。 「……俺は、いらない。 俺のそばにいる奴は、いつも、俺を置いて…みんな、どっかに行っちまうから―――。……だから、誰もいらない」 ―――どうせ、いつかはいなくなるのなら……いっそ ……誰も皆(みな)、はじめから、いないほうがいい――― 「……」 劉鳳は暫らくの間何も云わず。 カズマは云いたいことを云い尽くしたのか、もう何も云わず。 辺りは暫らく静寂が包み。 それから口を開いたのは、劉鳳だった。 「俺は…」 その銅(あか)い瞳が開かれる。 一つ一つ言葉を切りながら、しっかりと言い聞かせるように、彼は静かに云った。 「俺は、どこへも行かない」 いつもの彼らしい。 実に迷いの無い。 はっきりとした言葉だった。 「……」 「ずっと…お前に縛られたままだ…」 ―――カズマ――― そうして、劉鳳はそっと優しく。 それでも決して離さぬように。 カズマの全てを包み込むように抱き締めた。 |
ぼくはきみに縛られたまま ずっと きみのそばにいる いつも きみのそばにいる それを君が確かに感じられるように 僕はいつだって、君の傍にいるよ |
だから、君の瞳で僕を見て 僕に触れて、君に触れさせて |
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なんか前にも書いたことがあるような感じ?
静かな甘々目指してみました(見事に玉砕)
ちょっと初心に返った文の書き方をしてみたのですが、
いかがでしたでしょうか?
というか今回は早い。一時間くらいで書き上げたよ!
最後の一言は結構二人の気持ち〜。的なつもり。
相変わらず意味無し余白ばっかりの文ですみません。
-------------------------------------------- モドル ----