くまとうさぎ
かわいい君に贈るもの
今日はクリスマス。 雪が空から降ってくれば、意味もなく幸せな気分になる。 白い白いふわりとしたこの姿が、どれほど人の心に暖かく写るのだろうか。 実際はこんなにも冷たいのに…。 大切な人と。 大好きな人と。 掛け替えないあなたと。 今日は一緒に過ごしたい。 「カズマ、かなみ。俺からのクリスマスプレゼントだ」 そう云ったのは碧い髪に赤銅色の瞳の少年。劉鳳だった。 にっこりと。 彼のことを良く知っていると豪語する者ならば、己のその発言に自身をなくし驚愕するくらい珍しく、さらには嬉しそうな笑顔で。 きちんと包装された、彼曰く「クリスマスプレゼント」を差し出した。 「わぁ、ありがとうございますv劉鳳さん」 「……」 それを受け取ったのは二人。 嬉しそうにお礼の言葉を述べたのはふんわりとした茶色い髪を一つに結んだ翠の瞳の愛らしい少女――由詑かなみ。 もう一人は赤い髪に琥珀色の瞳の少年――カズマ。 こちらはまったく愛想無くお礼の言葉も云わなければ、何か怪しむようにその瞳を半眼にしていた。 「気に入ったか?」 「はい♪とっても」 包みを開けた時を見計らって訊ねる劉鳳に、かなみは先程よりもさらに嬉しそうに顔を綻ばせて云う。 貰ったプレゼントをぎゅっと抱き締めるその姿が、彼女の言葉とその笑顔が嘘ではないことを如実に現していた。 「……劉鳳…」 「なんだ?カズマ」 笑い合う二人の隣。 静かに声を発したのはカズマだった。 愛しい人に呼ばれて嬉しくない者はいない。 劉鳳はカズマに呼ばれ、にっこりと笑って応えた。 嬉しそうな笑顔が実に怪しく見えるのは気のせいだろうか。 というか、むしろいつもの無表情以上に感情が読み取れず、カズマはその半眼をさらに胡散臭げに細めた。 「…かなみにくまのぬいぐるみはわかる」 カズマは云った。 そう。 かなみが劉鳳から贈られたクリスマスプレゼントは、赤ん坊よりも大きいのではと思われるくまのぬいぐるみ。 瞳のくりくりとした愛らしいそれは、少女への贈り物としてはとてもポピュラーな物に思えた。 カズマは半眼のままに言葉を紡ぐ。 「かなみにはわかる…。けど」 「けど?」 「なんで俺まで同じものなんだよ!」 たまりかねてカズマは叫んだ。 カズマが劉鳳から贈られたもの。 それはかなみとは色違いでお揃いの、巨大なくまのぬいぐるみであった。 かわいいが…カズマにとても良く似合っているのだが…。 十六、七歳の少年が貰って喜ぶ物では…余りないかもしれない。 少なくともカズマはお気に召さなかったようだ。 「?気に入らなかったか?かなみとお揃いだ。…似合うと思うのだが」 「……」 さらりと云ってのける劉鳳に、カズマはもはや言葉が出てこなかった。 開いた口が塞がらないとはこういう時に使う言葉なのだろうか? そんなことが脳裏を過る。 何もしていないはずなのに多大な疲労感がこの身を襲うのは、いったいなぜなのか。 カズマは頭を抱えたい気分だった。 なぜだ。 なぜこんなにも疲れを感じているのだ。 「劉鳳さん…」 カズマが黙っていると、今度は控えめに劉鳳を呼ぶ声。 高い鈴の音のようなその声の主は考えずともわかる。 かなみだ。 「なんだ?かなみ」 劉鳳がかなみの方に顔を向ければ、カズマもそれに習ってかなみに視線を向ける。 二人に注視され、かなみはおずおずと言葉を紡ぎ始めた。 「私…カズくんとお揃いなのとっても嬉しいんですけど…」 「けど?」 「…その、カズくんには、くまよりもうさぎの方が似合うと思うんです」 かなみの台詞に、カズマは今度こそ目を点にした。 予想もしていなかった台詞であったらしい。 今度こそ本当に言葉も紡げないカズマとは対照的。 劉鳳は至極まじめな表情で思案するように受け答えをする。 「なるほど、それもそうだな。さすがだ、かなみ。次に来る時(←明日/笑)はそれを用意して来よう」 言葉の後半部分はもちろん笑顔で。 劉鳳がそう云えば、かなみもにっこり笑顔で返す。 「はい。白かピンクでリボンつきにして下さいねv」 「もちろんだ」 「…お前ら……」 楽しそうに語り合う劉鳳とかなみの隣で。 カズマはもはやそれしか言葉が出てこなかった。 今日はクリスマス。 大切な人と。 愛しいキミと。 共に過ごせたらどれほど幸せだろうか。 |
愛しい君に贈るのは
語れぬほどの愛と笑顔
君からも…
そう思うのは欲張りですか?
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クリスマスネタですv
今回始めて劉カズにかなみちゃんをかけてみました。
いかがでしたでしょうか?
本編物凄い痛くてシリアスなのに、こんな馬鹿話…。
でもこういう話好きなのです。
感想いただけたら嬉しいです。
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