伝える気持ち





















新年の始まり

澄みきった空

透き通る白い陽

隣で眠る君


























 劉鳳はひんやりと冷える冬の空気に触れて目を覚ました。
 空は白々(しらじら)と明るくなり始めた頃。
 まだ青には程遠い時刻。

 うっすらと開くカーテンの隙間から空を仰ぎ覗き見れば、地平の彼方に白く光る陽光が見え隠れする。

 今日は新しい年の始まり。
 だからなんだと問われれば、実は何でもなかったりする。

 年は新しくなるが、人々の生活がそれまでと何か変わるかといえば必ずしもそうではない。
 むしろ何も変わらない方が多いのではないのだろうか。

 実はとても退屈な日。

 劉鳳は自分の隣で身動(みじろ)ぎする気配に視線を向けた。
 思わず顔が綻ぶ。

 そこにいるのは愛しい人。
 カズマという名の可愛い人。

 それを本人に伝えたなら、その人は顔を赤くして怒るだろう。

(イヤ…下手をすればそれだけでは済まないか…?)

 怒らせれば何をしでかすか分からない恋人は、今は自分の隣で安心しきったように健やかに眠っている。

 規則正しく揺れるその胸。
 自分に擦り寄ってくるのは、可愛いといわずになんと表現しようか。

 劉鳳はカズマを起こさないように注意を払いながら、カズマの身体を抱き締めた。

 新年の始め。
 実はなんの用事(ようごと)もない暇な日だったりする。
 だからいつまでも寝ていよう。

 布団の中。

 いつまでもいつまでも。
 満足いくまで。

















「…腹減った……」

 カズマが云った。

 彼は目覚めればいつもそれを云う。
 彼にとってそれはもはや目覚めの挨拶なのかもしれない。

 劉鳳は苦笑した。
 けれどお腹を空かせて鳴く雛鳥のようなその人を見れば、その要望に応えないわけにはいかないから。

「すぐに用意する」

 そう応える。

 キッチンに足を運ぼうと身体の向きを変えれば、背後からカズマが声をかける。

「あ、劉鳳!」

「なんだ?」

 だから振り返って応えれば。

 ペコリ。

 カズマが頭を下げてた。

「?」

 劉鳳はいぶかしんで眉を顰めた。
 こんなことをカズマがしたのは始めてのことだ。
 いったい何がしたいのか。

 そんなことを考えていると。

「あけましておめでとうございます」

 云い、カズマが顔をあげた。
 それからにぱっと笑って。

「これからもよろしくお願いします」

 云った。

 だから劉鳳は暫し唖然とした表情をして。
 それから微苦笑をして。

「こちらこそ」

 そう云ってキッチンへと向かうために、カズマに再び背を向けた。

(バレバレ…)

 胸中で呟いたのはカズマだ。
 劉鳳の表情は、彼が自分に背を向けているために窺うことは出来ない。

 が、しかし。
 後ろから僅かに覗いた彼の耳は真っ赤に染まっていた。
 おそらくその顔を伺い見れば、先ほどの微苦笑を満面の微笑に変えていることだろう。

 だからカズマは苦笑した。

(わっかりやすい奴…)

 そんな彼に。
 そんな彼を好きでたまらない自分に。

 だからカズマは苦笑した。















 新年。
 始まりの日。

 実は何もない暇な日。

 でも重要なのは。

 また今年もよろしくと。
 それを伝えるためかもしれない。

 昨年の感謝を込めつつ。
 今年の絆を結び合う日。



「これ美味いな〜劉鳳v」

「そうか」

 嬉しそうに笑って云うカズマに、劉鳳は素っ気無く返しながらも。
 その表情はどこまでも穏やかで。


 これからも末永く。
 よろしくお願いします。


 だから微笑ってそう云おう。


「またず〜っと一緒にいれるといいよな〜」

「ああ」


 ずっと一緒に居たいから。































新年の始まり

伝える言葉

昨年の感謝

今年への希望

永遠に共にいると

素直な私の気持ち





















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コメント *-----


 新年あけましておめでとうございます。
 にもかかわらず新年早々くだらない小説をUPして申し訳ありません。
 しかも今まで以上にすっごい短い。一時間で書いたです(滝汗)
 ってか、毎度のことながら小説じゃないですね。これ(汗)
 この小説での中でも書いたのですがもう一度。
 昨年はこのHPに足をお運び下さっていただきありがとうございます。
 頑張りますので今年もどうぞよろしくお願い致します。


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