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寄り添いあって眠るとき
























 ごろん。
 カズマはベットの中で寝返りを打つ。

「む〜」

 意味のない呟きが洩れる。
 真っ白なシーツに降り注ぐのは、カーテンの隙間から洩れる朝の日の光り。暖かな春の香りが部屋に満ちる。
 温もりに、知らずその腕を伸ばしたのは、碧い髪の寝顔。彼の抱き込んだ腕の中で、自分のもっとも落ち着く場所を求めてもぞもぞと身じろぐのはカズマだ。自分を抱き込んだ彼――劉鳳の腕を枕にし、カズマは漸く安定した体勢を見つけたらしい。その動きが止まる。

 二人の容をのせたシーツがゆっくりと上下する。
 まだ二人は眠りの中。
 安定した呼吸と、穏やかなその表情が、二人がどこまでも暖かな温もりに包まれていることを表している。

 互いの温もりを求めれば、春の日差しの温もりと同じ。春の日差しの匂いと同じ。
 真っ白なシーツが二人の形をかたどる。

 さんさんと降り注ぐのは、ここ最近随分と早くなった日の出の光り。
 いい加減に眩しくなって、劉鳳はうっすらとその瞳を開いた。
 真っ先に飛び込んできたのは、ふわふわとした赤茶色。考えずともすぐに分かるその正体に、深紅の瞳が数度瞬き再び閉じられる。
 ぼんやりとした端整なその表情が、僅かに微笑んだようにも見えたその瞬間。

 ぎゅっ。

 頬擦りをするようにぴったりと抱き着いて、彼は再び眠りに落ちていった。
 その面に当たる彼(か)の人の赤い髪が温かい。腕の中にある温もりに心が酷く落ち着いていく。どうしようもないくらいに穏やかになる心。

 人の肌の温もり。
 息遣い。
 陽の日差しの中。
 まどろむ。

「カズマ…」

 愛しい人の名を呟きながら、碧い髪のその人は、再び眠りに落ちていく。





「ばかだよな〜」

 ぽつりと呟いたのは赤い髪の彼。
 上目遣いに覗くその琥珀の瞳がとても美しかった。

 彼が覗き込んでいるのは自分を抱き締めて放さない碧い髪の彼。いやに端整な顔立ちなのに、実に表情が動きにくく…けれど実は短気で我侭な彼。
 表情が動きにくいけれど、その感情は実はきちんとはっきりと表情に表れてしまっていて…幸か不幸か、自分はそれを正しくはっきり読み取れてしまうから。

 だから思わず零れる溜息。
 自分をどんなにか思ってくれているのか。求めていてくれているのか。
 ……愛していてくれているのか。

 分かってしまうから零れる溜息。

「ほんと…ばかだよなぁ」

 結局愛情に飢えているのだろうか?
 こんなにも求められることが、酷く嬉しいと感じてしまう自分がいることに…溜息をついてしまう。

 誰でもいいのではなく。
 彼だから嬉しいのだと。
 そう確信してしまう自分がどこか憎らしい。

「どこにも行かねぇのにな…」

 そんなにきつく抱き締めなくても、ずっと隣りにいるのに。
 でも、抗わないのは、きっと自分もそれを望んでいるから。
 こうやって、その呼吸すら、この心音すら重なるほどに。互いの体温が交わるほどに近くありたいから。この近さが…酷く酷く、心地良いから。

「ふとん…気持ちいいから……」

 なんとなく。
 ぽつりと零れた自分の本音が恥ずかしくて、彼は云い訳のように呟いた。
 こんなにも気持ちがいいのは、心が穏やかなのは。きっと、この日溜まりの朝のせい。

 ああ、ヤメヤメ。

 こんな風に考えるのは、自分の分野ではないのだ。
 ただ感じるままに。
 ただ心の赴くままに。

 目の前の彼はいろんな意味で自分の心を満たしてくれるから。

 だからきっと一緒。
 ずっと一緒。
 この朝も一緒。

 まだまだ一緒にいたいから。


 もう少しだけ、抱き合ったままで。






















朝に目覚める
隣にある安心
温かいから
また眠ってしまう

目覚めの熱は心地良すぎるから















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こめんと *--------------------------------------------------

 短ッ。しかも中身無し。
 それでも上手く言葉に出来ないもどかしさに襲われながら必死で書きました。
 寝起きのふとんの中ってすっごく気持ち良くありませんか?
 そんな暖かさを書きたかったのですが、どうも上手くいきません。
 こんなものでも読んで頂けた事に感謝しつつ。さらに感想とか貰えたら嬉しいなv(爆)とか思ったり(汗)


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