+ 眠くて気だるいある日の朝に +




 しとしとと、まるで静かな泪のように雨が降っていた。まだ朝も早いというのに、窓から覗く外は夕暮れのようで。
 朝を越えて夜が、再び巡ってきたよう。

 人は陽の光を受けて目覚めるのだ。
 空が暗く陽が指さなければ、人の体も、心も、健康的な活動を営む気力を起こさない。太陽は結局、すべての生き物にとって活動力となるのだ。
 陽の光を受けて、人はまず目覚め、そしてその時間を進ませていく。

 動き出す。

 雨が降っていて、少し肌寒かった。
 大きな、はっきりとした季節の変わり目はどこもこうだ。
 春から夏への以降のときは、梅雨の肌寒さに。
 夏から秋への以降のときは、秋雨の肌寒さに。

 暖かくなると思うと寒さが遅い、寒くなると思うと、また陽の光が顔を覗かせ。
 気候が不安定になり、それから安定する。その安定している部分を季節としているから、この国には四つ以上にもっと多くの季節があるとしてもいいのかもしれない。
 もっとも…そんなふうに何かに括ってしまう必要はどこにも、欠片もないのだが。

 暖かいときはどんなときだって暖かいし、寒いときはどんな時だって寒い。
 雨が降れば肌は冷えるし、日が照っているれば温まる。

 今日は雨が降っていた。
 しとしとと、静かに降っていて。雨が降っていることにさえ気がつかなかった。
 温かな毛布に包まれて、「ああ…まだ朝じゃないのか…」なんて、いつも目覚めている時間と同じに目覚めた頭がぼんやりと考える。

 今日は朝が遅い。―――と。

 ごろごろ。
 布団の中で意味も無く動いてみる。そんな大きくは動いてはいないけれど。
 少し肌寒くて…やけに毛布が暖かくて。

 眠りから目覚めたときの布団とは、どうしてもこうも肌に心地良いのだろうか。

 身(からだ)をすっぽりと包み込む。
 くるくると毛布をぎゅっと、ふわりと巻きつけて、ふと目の前にある壁。上へと視線を向ければ、この自分の身を抱き込むように丸まって眠っているその人の顔。
 碧い髪が柔らかそうで、そっと手を伸ばしたのことに、理由など無かった。

「カズマ…?」

 ちょっとしたことですぐに起きてしまうのは、何も彼だけではない。自分だってそう。
 ただ、少しは気を許しているから、こうやって一緒に眠っていたりする。もう彼も半分覚醒しかけていたのだろう。髪を撫でたら、ぼんやりと目を覚まし、その聞きなれた心地良い声で名前を読んでくれる。

 彼のこんな寝ぼけた顔を見れるのは、自分だけの「とっけん」というやつらしいのだ。
 特別だということらしい。
 彼がそう云っていたのだから、間違いないだろう。こういうことに関してはとことん真面目にバカ正直な彼のことだから。

 少し気分が良いのだということは、なんとなく内緒だ。
 やつがつけ上がりそうな気がする。
 ものすごく嬉しそうな顔を見せてくれることも想像に難くないが、べつにそれはこんなことを云ってやらなくても見ようと思えばいくらでも、いつでも見れることだから。
 これも少しの優越感。
 そしてこれももちろん内緒。

 人が一番安心できるのは人肌なのだ。結局。
 生き物の体温がもっとも心地良いぬくもりを与えてくれる。

 その日は雨が降っていた。
 しとしとと。

 音も無く降る雨。

 今がもう朝だなんて、気がつきもしなかった。

 だらだら、だれだれ、だるだる。
 ころごろころりん。
 すりずず。

 ぽふっ。

 彼の胸の中に擦り寄っていけば、何の戸惑いも無く受け入れてくれる。背中に回される腕に心が温かい心地に満たされて、自然と顔が嬉しさに歪む。
 俯いた自分は顔は見えていないが、その雰囲気はきちんと伝わっているだろう。

 自分にも、彼が穏やかに微笑んでいる様子が伝わっているように。

 このまま。
 朝だと気がつかずに、もう少し惰眠をむさぼろうか。

 まるで子供のように甘え合いながら、そのぬくもりに触れ合って。



 うとうと、うとうと。



 ぬくぬく、ぬくぬく。



 突然鳴り出す無粋な目覚まし。





 さて、彼はそれを無視することができたでしょうか?

 それは、銅い髪の彼の人。
 その誘惑しだい。










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 あとがき +------------------------------------------------------

 あ〜更新停滞しててすみません。裏の連載&シリーズ進まなくてすみません。サマーセッションに行ってました。言い訳です。…すみません!!
 サマーセッションとは、普通半年掛けて終える講義を4集中的に丸一日遣り通して4日間で終わらせるという夏休みのイベント?です。終わらせてきました。
 ええっとですね、それからすぐにHPの更新をしなかったのは他にも用事があったのと、あとはそう!!どうしても!!この日!!2002/09/23!!「劉カズオンリーイベントLOVE&BATTLE!!」当日に、劉カズ小説をUPしたかったんです〜。にもかかわらずだれ文。しかも前にも書いたことあるような?へぼへぼでぼへぼへです。
 一般参加で行く予定です。これから(笑)
 なのになんだかあんまり劉カズっぽくないですか?物凄い駄文というか…なんだか良くわからないものになってしまいました。布団の中でいちゃいちゃ…してない?(別にそのつもり書いてたわけでもありませんが)はじめのタイトル「眠くて気だるいある日の午後に」だったのですが、朝までで終わってしまったので変更(爆)
 それでは、ご意見ご感想お待ちしております(切実)---2002/09/23

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