+ 白のロンド +
しんしんと舞い降(ふ)る雪を見上げて。 しんしんと舞い降る雪が輪(えん)を描(えが)き。 やがてそれが止(や)み。 現れるのは、白い光り。 朝陽が―――昇る。 カズマはどんよりと厚く重い空を見上げていた。ちらちらと絶え間なく舞い堕ちるのは、小さな白い結晶。 きれいだとは思ったが、美しいとは思わなかった。 吐く息は白く、鼻の奥がつんと痛む。手の先がちりちりと痺れるように痛み、もはや麻痺しているのかもしれなかった。 見上げればちらちらと舞い散る白い華弁(はなびら)。 やさしいとは思ったが、あたたかいとは思わなかった。 カズマはゆっくりとその腕を上げた。彼が彼たる所以とも云える、その右の腕。琥珀の瞳に、ひび割れ、変色したそれが写し出された。 静かに舞い散る白。 とめどもなく降り続け、しかしそれが積もることは決してなかった。 厚く重く。 幾重にも重ねられたのか。それとも、ただ一枚。膨れ上がってしまっているだけなのか。 見上げた空に写るのは、自分のその拳と同じ。灰色とも土気色とも云えないような、そんな厚く重たい雲。 そこから舞い散る、雪。 「カズマ」 掛けられた声は背後から。 返事を返す変わりに、無言で振り返った。 「冷えるぞ」 とどくのは耳に心地良い、音(こえ)。 碧い髪と深紅の瞳。調(ととの)った顔。背筋の伸びた背。均整のとれた肢体。 「じゃぁ…てめぇがあっためろよ…」 ぽつりと、洩らし、視線をはずした。 後ろへと巡らせていた首を元に戻す。 広がるのは灰色の世界。 灰色の大地。 灰色の木々。 岩と空気と風。 灰色の空。 舞い降る雪だけが、白い。 まるで炎のようだと思った。 背後から抱き込まれた。 自分の背中にあたるぬくもりは、あの、広い胸。 自分の胸に回されるその美しい腕は、いつだって、この身を熱くする。 いつだって、夜はその胸に身を寄せ、その腕に抱かれ、その背に腕を回し。―――そして朝を迎える。 視線だけを動かして見上げれば、鮮やかな緋(あか)。 その視界の端(はし)に写る蒼灰色(はいいろ)の空。 舞い散る白い雪が…止んでいく……。 閃光(ひかり)が射す。 「明けまして、おめでとう―――カズマ……」 「……意味、わかんねぇ………」 少し目を眇めて、劉鳳が云い。 カズマは、首だけを上向かせて、呟いた。その瞳が、朱みがかった琥珀で―――。まるで、無垢な子供のようだと。 劉鳳は思った。 ぼんやりと開かれたままの、少し冷えた口。そこから覗く鮮やかな赫に惹かれるようにして、劉鳳はゆるやかに、無意識の内にその顔を近付け…二つの唇が重なる寸前。 カズマが言葉を発した。 「―――けど…おめでとう、な……劉鳳………」 呟いた言葉。 見上げてくる視線。 今度はそれに惹かれて―――二つの唇は、重なった。 寒空の下。 雪が舞い散る。 世界は蒼海色に染まり。 雲の合間から陽光(ひかり)が射す。 明けない空はない。 |
----+ こめんと +-------------------------------------------------------
あけましておめでとうございます。この小説は2003年の1月中のみフリーとさせて頂きます。よろしければ持っていってやって下さい。ちなみに劉カズです。 今回は雰囲気のみで書きました。なので漢字の使い方とか句読点の使い方がいろいろおかしいです。というかその場で思いついた「即興小説」です。 ちなみに初めと終わりは配布小説の邪馬台幻想記サイドと同じです。初めは一緒に登場させてしまおうかとも思ったくらいですが、やめました。 それでは、良いお年を(って、これ1月最後の方になったらコメントとしておかしいかもですね。しかもどっちも同じだし/汗) 新年そうそうすみませんです---------------------------2003/01/01 |
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