+ ねこ と いぬ +
- first contact -
今日は天気も良かったので、カズマはほてほてと散歩に出かけていました。太陽が朱く彩付くまでにはきちんと帰るつもりです。ご飯を食べ損ねてしまうのもありますし、何より、自分が面倒を見ているまだ幼いあの人間の子が心配そうに顔を歪ませてしまうので。 アスファルトの上。そこよりも、むしろ白い石造りの塀の上の方を歩くほうが好きです。 壁のために影になってしまっている地面とは違い、そこはお日さまの光を遮るものがありませんから、ぽかぽかしていて明るくて、気持ちがいいのです。 カズマはほてほて、ほてほて、白い石造りの壁の上を歩いていました。 途中、相も変わらず何が楽しいのか分からないけれど、悪友の「きみしま」がせっせと「あやせ」に「ぷれぜんと」を贈りに行くのに出会ったり、弱いくせに突っかかってくる「ざこども」を蹴散らしてみたり。 気がつけば、ここは見たことのない場所。初めて訪れました。 「ああ?どこだ、ここ?」 くるりと首を巡らせて当たりを見回しますが、やはり見に覚えがありません。まあ、別にこんなことは初めてというわけでもないですし、ちょっと予定の時間に帰ることができないかもしれませんが、決して帰れないということもないでしょう。 そのへんの勘に関しては、カズマは自分にたいそう自信を持っていましたし、それはいつだって彼自身を助けてくれました。 そうとなれば、とりあえず歩き出したほうが得策です。立ち止まっていては何も始まりません。 カズマはとりあえず歩きます。すると下の方からなにやら鼻腔をくすぐるいい香りが…。 視線を向けてみると、そこには緑の芝生の上、一人掛け用の丸くて白くて細っこく見えるテーブルとセットのイス。座っているのは黒髪の人間の女。匂いの元はその女の前。テーブルに色取り取りに並べ立てられた甘い「おかし」たち。 匂いにつられるようにして、そちらに一歩足を踏み出しかけて、カズマ気がつきます。女の隣には「いぬ」が一匹。紅くてきれいな目で、さらさらの碧の毛並みの…いぬ。 犬は苦手です。苦手というか嫌いです。図体ばかりでかくて、「ばか」のくせに自分たちは頭がいいのだと思って、どいつもこいつも偉そうです。しかも余計なおせっかいを焼いてきます。 ご主人にはあーしろ、こーしろ、人間には迷惑をかけるな、一人で勝手に行動するな。 本当に余計なお世話です。 というか、「ごしゅじん」なんて自分たちには…少なくとも、自分にはいないのです。 けれど無視できないのです。 なぜなら奴らは自分たちよりも大きくて力があるのです。負けるとは思いませんし、自分よりもずっと小さくて、よわっちい奴らもいっぱいいっぱいいます。 けれど…。 「うっし!!」 カズマは気合一発、足を踏み出し、「おかし」のもとへと歩き出しました。 今日は天気がいいので、午後はご主人様である「水守」の希望に従い中庭で優雅に静かに過ごします。食事を済ませれば、主人の前には軽い軽食と咽の渇きを潤すための紅茶が残され、あとはメイド達によって下げられます。 主人は暖かな陽射しの中で本を読み、自分はそんな主人の傍らに静かに控えて。 暖かな陽射しにまどろみ、その静寂に耳を傾けていると、不意に意識の隅に引っかかるものがあり、劉鳳はそちらへ注意を向けます。 するとそこには一匹の「猫」。琥珀というのか、なんとも不思議な色彩(いろ)の瞳をした猫です。まだ成熟しきっていないだろう身には、しかし不思議な生命力を感じます。 猫は嫌いです。嫌いというより苛々するのです。周りの迷惑も顧みずに、自分の好き勝手に行動し、自分が危険な目に合っても、誰かを危険に巻き込んでも反省の色もないのです。昨日のことは昨日のこと。とでもいうかのように、過去の自分たちの過ちをすっぱりさっぱり忘れます。 しかも自分がお世話になっているものに対しての敬意もないのです。 親切に注意してやろうとすれば、やたらと暴れます。 とにかく暴れます。 まるで「それしかできないのか!!」と、叫びたくなるほど、彼らは人の行為を撥ね付けるのです。 こちらにまっすぐ向かって歩いてくるの猫をいぶかしみつつも、それでも劉鳳が黙って見ていると、本に集中していた主人もその存在に気がついたようでした。 「あら?――どこから迷い込んだのかしら、いらっしゃい、猫ちゃん」 と、優しくその手を差し伸べます。 猫は無言のままテーブルの上に飛び乗ると、そのままやはり無言で(しかも我が物顔で)主人の前に並べられている軽食の類に口をつけ始めたのです。 しかもたいそう汚く食べ散らかしています。 主人は「あらあら、お腹がすいてるのね」と、多少眉は顰めていますが、ちょっと困った程度といった感じで、苦笑しつつその様子を見ています。 しかしそれは、劉鳳にとっては許せない行為でした。 「おい、貴様」 声を掛ければ一応は意識を向けてもいたのでしょう。わずかに猫の視線が自分を捕らえたのを確認します。 しかし猫はちらっと視線を向けたあとは、そのまま何事もなかったかのように、再び食事に没頭します。 怒りに打ち震えながら、それでも劉鳳は吠え立てることなく、静かに、再度呼びかけました。 目の前の、猫に。 匂いからの推測の通りに、それはとてもおいしいものでした。 人間の女は特に咎める(邪魔する)こともしないので、カズマは己が腹の欲求の訴えるままにもくもくと食べ続けます。 すると女の隣にいる犬がなにやら吼えています。 もちろん無視です。答えてやる義理などカズマにはかけらもありません。 無視して食べ続けていると、再び犬が吼えます。しかし無視です。 と、突然の衝撃に襲われ、カズマは一瞬(不覚にも)何が起きたのか分からずにテーブルから地面に転がり落ちました。 「劉鳳!!」 慌てふためいた女の声と思しきものが聞こえますが、そんなものは右から左。ただただ衝撃に追加された「音」としてのみ耳に届いただけです。 幸い下はふこふこ、ふかふかの草の絨毯。たいした痛みはありませんでしたが、何が起きたのかを把握するのにしばらく掛かってしまいました。 きょとんと目を見開いては閉じてと、瞬きを繰り返します。 明るかった景色に急に影が射し、焦点の合ったその目の前に現れたのは……。 「―――いぬ野郎…(怒)」 カズマは怒りもあらわに押し殺した声で呟きました。 陽射しの暖かな昼下がり。 ねこといぬ。 彼らはこうして出会ったのでした。 つづく |
----+ こめんと +---------------------------------------------------------------------
とりあえず、一番悩んだのはタイトルを英語で表すかひらがなで表すか、ということでした。 これはあくまでも猫カズマと犬劉鳳の思考と知識によって書かれているので、カズマのところはやたら「ひらがなカッコ書き」が多いです。しかしそのあとでひらがなで記されていたところが漢字に変換されていたりするのは、読みやすさを考えてです。時々間違え変換です(爆) 猫に犬。飼い主はあの方たち。ちなみにこれは書いてて思ったことですが、「ねこ=ネイティブアルター」、「いぬ=ホーリー」と変換してもいけそうです(笑)偶然とは恐ろしいですね(大笑) もはや裏にて隠す気ゼロの開き直り。寝ようとしたら突然脳内に何かが光臨したんです。きっとどこかで見たことのあるネタ。でもいまさらそれを云ってたらこのサイトは成り立ちません。 そんなわけできっとシリーズとして続きます。あまりにも嫌だ!!という声が大きかったときは裏に移すかするので…とりあえずここは我慢してください(汗)---2003/02/24 |
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