風の様に











きっと君はどこか遠くへ行ってしまう

出会った時からそんな気がしていたんだ

どんなに僕が君を見て

どんなに僕が君を手に入れようと手を尽くしても

君は僕を省みもしないで離れていく


君はいつかここを去って行く

いつもそんな気がしてたんだ

僕の思考錯誤も全て全て無にして

君は僕の手には決して止(とど)まらない


そんな気は、いつもしていたんだ











 紅真は静かにそれを聞いていた。

紫苑が陰陽連を裏切った――。

 その知らせが入ったのは、国崩しの任務から戻って直ぐだった。
 ――ああ、やっぱり。
 初めに思ったのはそんなこと。
 空っぽになったような心と頭が、漠然と感じた。
 次に感じたのは喜び。それから悔しさが込み上げてきて――悲しみは、結局湧いてはこなかった。
 ただ、何を感じても、一番根本的な感情の根っこのような部分は、一番初めに感じ時のまま。空っぽのままだった。

 悔しさ。強くなりたいという強い思いが、紅真を心具創造に目覚めさせた。
 歓喜や狂気が心を支配しようとして。
 けれど全てを埋めることは結局なかった。
 やっぱり空っぽ。
 心カラっポ。


 常世の森で紫苑に逢った。
 と云うよりも、追いかけて呼び寄せた。
 嬉しかった。
 空っぽになってた心の隙間が、少し埋まった気がした。

 戦って。
 勝って。
 戦って。
 負けた。

 ボロボロだった。

 ぼんやりと空を見ていた。
 青かった。
 雲が流れていて――。

 ――ああ、いい天気だなァ…。

 そんなことをぼんやりと思った。

 シュラが来て。
 紫苑の話になった。
 笑った。
 心が埋まった気がした。

 追いかけよう。

 そう思った。

 追いかけて追いかけて追いかけて。
 いつか必ず捕(つか)まえて。
 今度こそ捕(と)らえてみせよう。

 流れる風のような彼を。

 初めて逢った時からそんな気はしていた。
 ああ、こいつはいつかきっとどこか別の場所に行くな。
 漠然とそう感じた。

 何故そんなことを感じたかは解らなかったし、別にその時はただそう感じただけで深く考えもしなかったけれど――。
 それは、もしかしたら捕らわれた証拠だったのかもしれない。
 流れる風に、心奪われたような――。

 いろいろな事があって。
 けっこうきつく自分を抑えつけて、張り詰めていて。
 そうしないと、なんか倒れてしまいそうな気がしてた。

 きっと、それはお互いにそうだったんだろうと。
 今になって感じる。

 けっこう張り詰めていて、焦っていた。
 抽象的で、それでも明確な目標があったから。
 かなり焦ってた。

 きっと、相手も同じだったのだろうと。
 今はそう感じる。
 漠然と。

 本当のところはわからないけれど。
 多分、きっとそうだったのだろう。

 けれど、やっぱり違っていて。
 だからこそ、こんなにこだわっているのかもしれない。

 目標に迷いなくただ突っ走っている自分と。
 目標にただ突っ走ってそれなのに迷っている彼。
 迷いがないのに立ち止まっているかのように足踏みする自分と。
 迷いだらけのくせに風の様に横をすり抜ける彼。

 風の様になりたかった。
 風を捕まえてみたかった。
 星を掴むように――。

 手にできない物ほど欲しくなるのだ。

 どんな物でも。
 どんな人でも。
 対象は関係なく。





















いつか、君はきっといなくなる

漠然とそう感じた

漠然と感じていて

それでもいざそうなると

心が空っぽになった


張り詰めて

焦って

縛りつけて


君と僕は同じで


でもやっぱり違う


掴めない物ほど手にしたい

星のように

風のように



















夜空にとどまり輝く星と

宙(そら)をするりと翔ける風

どちらもこの手に掴めない

僕が星なら君は風

澄ました顔してすり抜ける

どこか遠くに行ってしまう

自分の思うがままにどこへでも

突然過ぎて

人の心をカラにする











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何が書きたかったと云うと…なんでしょう?となります。
初め何か書こうとしていて冒頭部分だけ書いておいたんです。
で、何を書こうとしていたのかさっぱり思い出せなくなりました。
小説というよりは詩ですね。これ。
淡々としていて。それでも綺麗な物が書きたかったです。
透明感があるような?
最近こんなのばっかりです。
なんか尻切れとんぼ(?)みたいな意味のよくわからない小説ばかり。

紫苑も紅真もある日ふらりといなくなりそうな気がしません?
やる事やったら誰も知らないところに行っちゃいそう。
いつも捕らわれてばかりで焦って緊張して。
常にどこか張り詰めているはずなのに
けっこうふらふらしてる気がします。
星みたいにピカピカしてすっごい存在感があって
風みたいにあることがあたりまえで。
あたりまえに傍にありすぎて、でも気がついたら通り抜けていて。
って、何が書きたいのかよくわからなくなってしまいました。
すみません(もう謝るしか出来ないです)



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モドル