+ 枯れ葉舞う季節 +




















枯れ葉が舞う季節


























 暗闇の中。
 夜の静寂。
 少年の声が響き…煌く一線の光。

「この国を…崩す者だ……」

 あとには血飛沫と倒れる人影。
 人の倒れた鈍い音が響き、建物が僅かに揺れた。
 暗闇にまぎれ…その血の色さえどす黒い。

 少年は建物を出、外に出た。
 外には夜の静寂。音も無く光り輝く星々。月。
 少年は空を見上げた。
 冬の到来を告げる冷たい風が吹き、少年の僅かに伸びた髪を揺らす。銀に煌くその髪は月の光に照らされ…まるで地上の天の川。きらきらと煌く。

「早かったじゃねーか」

 相変わらず感情も無く人殺せるなんて、たいしたガキだぜ。

 そう云いながら、馴れ馴れしく少年の肩に腕を巻いてくる者がいた。長身の男だ。
 少年は男を視線をずらすだけで見上げた。
 細く吊り上った瞳と切れた口。下卑た笑いだと少年は思った。その男は、つい最近少年の仕事上の相棒となった人間だ。少年よりも一回りは年上であるにもかかわらず、男は少年を対等に扱った。
 少年は男の名前を思い出そうとし…そしてすぐに諦めた。興味が無いので端(はな)から憶えてなどいなかった。その事実を思い出したからだった。

 少年は小さく溜息をつき。また再び空を見上げた。
 辺りは相変わらず静かだった。
 朝が来れば騒ぎが起きる。
 この静寂が掻き消えてしまうのを少し残念に思いながら、少年は一度だけ振り返った。

 暗闇のシルエット。
 あの建物の中に、今、自分が殺した人間の抜け殻――もはやただの肉の塊(かたまり)が転がっている。
 少し胸が痛む気がしたが、考えないようにした。

 死者の復活などありえない。

 それは嫌というほど知っていた。
 その罪。
 哀しみ。
 痛み。
 孤独。
 そして恐怖。
 全て、嫌というどほど知っている。
 絶望に襲われる。

 少年はもう歩き出した。
 これは正しいことなんだ。
 そう、自分の心に言い訳をして。

 これから先にある未来の平和のために、今ある幻の平穏を崩すのだ。
 砂の上に建てられた城は、もうすぐに崩れ去る。崩れて、一つずつ消えて行く。
 でこぼこに荒れた砂地が平地に戻り、そこには真の平和が訪れる。
 破壊の痕(あと)に…創造は成り立つ。
 哀しみの上に笑顔が生まれる。
 そう信じて…そんな言い訳を必死でして。

 未来の笑顔のために。今ある笑顔を摘み取っていく。

 木枯らしが吹く。
 冬の到来を告げる冷たい風。
 少年の髪を揺らし。枯れ葉が辺りに舞う。風は通りすぎる。
 少年は空を見上げた。
 夜の静寂に、冬の星が煌いていた。




























太陽は、まだ、遠い




















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こめんと +----------------------------------------------------



 なんか原点に返るような気持ちで書いてみました。
 でも、原点に帰っちゃうと、私の邪馬台幻想記ぱろ(←ネット上で出した)の原点は紅真×紫苑だから…う〜ん。どうなんでしょう?(爆)
 短いことは間違いない?でもこれくらいの長さのほうが読みやすいのかなぁ…とも思ったり。
 最近長すぎると読むの嫌になるかも…という考えが頭の中をぐるぐると。

 ご意見ご感想お待ちしています。



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