+ 反戦理由 +






 僕は、戦争が嫌いだ。
 だって……。


「――キラ! どうして僕たちが、戦わなきゃならない! どうして地球軍なんかにいるんだ!」
 ザフトに来いと必死に訴えるアスランに、しかしキラはかぶりを振る。
「僕は地球軍じゃない!――でもあの艦には、仲間が……友達が乗ってるんだ!」
 そう、あそこには、大切な、守るべき友人たちがいる。
 それに――。
「君こそ、どうしてザフトなんかに! どうして、戦争なんかしてるんだ! 戦争は嫌だって、君も言ってたじゃないか!」
 その言葉に、アスランの目が見開かれる。
「僕も、戦争なんて嫌だ。――戦争は、色んなものを奪ってしまう……人の命だって。そしたら……!」
 言葉を切って俯いたキラに、アスランが気遣わしげに声をかける。
「キラ……」
「人って、死んだら幽霊になるじゃないか!」


「「「…………は?」」」


 あまりにその場の雰囲気から外れまくった台詞に、敵味方揃って大合唱。
 ただし、キラとの付き合いが長いアスランと学友たちは、期せずして同じ考えに辿り着いていた。
(……そういえば、こいつ(キラ)は霊感が強かった……)
「ただでさえ未練残して死んだ人って、幽霊になりやすいっていうのに! その上戦場なんて、志半ばで死んじゃった人ばっかりじゃないか!」
「……おまえ、今でもそういうの見えてるんだな」
 昔から、キラの霊感はとどまるところを知らず、ところ構わず現れてくれる幽霊たちに、彼は悩まされっ放しだった。いかに親友のアスランといえど、こればっかりはどうしようもなく、せいぜい話を聞いてやることしかできなかったのだが……。
「だいたい今だって、そこら中に人が浮かんでるんだから! アスランたちの機体の傍にも!」
「や、やめてくださいよぉ、そういう話……」
「まったくだ! これだけ科学の進んだ世の中に、幽霊なんかいるわけないだろう!」
 ちょっと腰引け気味のニコルと、呆れたようにきっぱり言い捨てるイザーク。ディアッカは、微っ妙〜に顔を引きつらせて沈黙。
 アスラン、深々とため息をついて一言。
「……ちなみにキラ、俺の傍には誰がいる?」
「……アスランたちと同じようなパイロットスーツ着た、同い年くらいの男の子と、金髪の人……」
 ……ラスティ! ミゲル――――っ!!
 もう少しで名前絶叫するところでした。
 キラは他三機のガンダムの方を見やり、ぽつりと一言。
「……あっちの機体、何か作業員みたいな服着た人が大勢……」
(((うわあああぁぁぁ)))
 ザフト組、思わず周囲を見回してしまったり。
 ……こいつ本物かも……。
「……っつーか、そういう話マジやめてくれ……」
 意外や意外、真っ先にギブアップしたのはディアッカ。イザークが苛立たしげに怒鳴る。
「ディアッカ! そんな話真に受けるな!」
「っつったって俺、そういう話ダメなんだって!」
「でも、もうコクピットの中にもいるし……」
「げ――――――ッ!!」
 冗談じゃないと拳を振り回すディアッカ。それを見て「まったく!」などと言っているイザークの額にも、なぜか汗。
 唯一平然としているアスランに、ニコルが感心したように言う。
「アスラン、よく平気ですね」
「ああ、もう慣れた」
 さらっと答えるアスランに、ニコル絶句。
「昔から、近所や学校では有名だったからな。俺は昔から聞き役だったし。しまいには、俺まで妙な気配感じるようになってきたりして……」
 どことなく遠い目をして、しみじみと語るアスランに、ニコルは心から同情してしまったとか。
 そこへ、トドメの一言。
「それに、キラに悪気はないんだろうが……こいつの話、描写がやけにリアルなんだ……」


 ザフト&地球軍双方、戦意完全喪失。


「――とにかく、僕はザフトには行けないし、そもそも戦争もしたくないんだから」
「……分かってる……嫌っていうほど……」
 深々とため息をついたアスランに、珍しく気遣わしげな通信が、他のメンバーから入る。
「アスラン、気を落とさないでください……」
「おまえって、意外と苦労性だったんだな……」
「……キラ・ヤマトをこちらに引き入れるのは、考え直した方がいいと思うぞ」
 キラと戦いたくなんかないが、かといって毎日そのテの話を聞かされるのも嫌だ……。
 揺れる心を抱えて帰還する、アスラン・ザラ十六歳。


 それ以前に、さっきの話全方向通信ででも流してれば、もしかして一時停戦くらいは実現したんじゃ……?
 そう思った者が何人かいたりしたのだが、それは彼らの胸の内にしまわれた秘密である。


 ――END――







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 はづき様よりあとがき +-----------------------------------------------

あとがきモドキ。
 すいません。ついにギャグに走りました(爆死)。
 最近ずーっとシリアス一辺倒だったので、何か楽しいほのぼのげな話を書きたいなぁとか思いつつ第五話を見たその後、何をどう間違ったのかこんなネタを思いついてしまい……夜中の二時に、一人で含み笑いする変な人と化しつつ(爆)一時間弱で書き上げたシロモノです。
 ……もう呆れつつ笑ってやってください……。

------------------------------------------------------+ 感謝の言葉 +----

 突然素敵小説が送られてきてもうびっくりです。そして感激大はしゃぎ3(爆)これに+感動も含めなければならいことにさっき気がついたり。
 そんなこんで楽しいお話をありがとうございましたvv
 はじめはアニメにそったシリアス調で、キラの一言によってギャグへ変貌。その転換の仕方が素晴らしく、もうお話の中にいるような感じで読めました。
 うららかな冬の午後のひととき。パソに向かって含み笑いをするにやけ顔の危ない人がここに一人誕生したよ、はづき様!!
 キラってけっこうそういうのもあるかもしれませんね。天然(希望)だし(笑)
 それでは、素敵な小説をいつもいつも本当にありがとうございます!!(多謝)
 それにしても今回はレイアウト(色)がいつもにまして変です。そのうち直します(平謝り)


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