+ asuka +
--angels...b
















その腕を伸ばして
真っ白な心と共に
僕に微笑みかけてくれる
その温かさが、こんなにも辛い




















 ここは地球側が用意した異界からの訪問者のための部屋。地球に存在するありとあらゆる美しい植物が、調和を持って配置されている。
 それぞれに割り当てられたとある一室。その庭で、三人の男女が談笑を交わしていた。
 テーブルに置かれているのは、まだ暖かい紅茶とお菓子だ。地球に来て真っ先に見つけたのだと云って用意したのは、談笑する三人の中の唯一の女性だった。いや、まだ少女というべきか。

「お久しぶりです、ラクス女王陛下」
「お久しぶりですわね、アスラン。お元気そうで何よりですわ。けれど、女王陛下の敬称は不要ですと、何度も申し上げましたでしょう」
「すみません、ラクス。癖なんですよ、敬称をつけるのが」
「まぁまぁ、それは嫌味な癖ですわね」
「本当に」

 此ノ花ノ国ラクス女王が、常と変わらぬ愛らしさと穏やかさをあわせ持った微笑で受け答えれば、アスランは苦笑で返した。
 その横では、ニコルがやはり笑顔で様子を静観している。

「しかし、私たちの世界で行われた第一回話会でもそうでしたが…女王自らが自界(じかい)を離れて参加するのは…大丈夫なんですか?」
「お気遣い感謝いたしますわ。けれど、その心配は無用です。私たちの界は、おそらく一番平和ですわ」
「でしょうね。……うらやましい限りです」
「そう思っていただくために申しましたのよ」
「あなたにはかないませんね」
「あら、今頃お気づきになられましたか?」

 ラクスとアスランは出会った頃からこうだった。恋愛感情とはまったく別次元で、二人はどうも気が合うらしい。
 もっとも、以前に限らず現在でも、この二人が男女としての仲を疑う…というより、利用できないかとたくらむ輩は多い。今ではまったく疑ってもいないニコルとて、当初はアスランとラクスがお互いに惹かれ合ったのだと思ったくらいなのだ。今では欠片もそんなことは思いもよらないが。
 しかし、当の二人は完全にそれらを無視して、こうして嫌味だかなんだかよく分からない会話の押収を交し合う。

「そうは云いましても、きちんと理由はありますのよ」
「理由?話会に参加すること意外に…ですか?」
「異界を直接ご覧になることですか?」

 初めてニコルが二人の会話に口を挟んだ。僅かに興味を引かれたからだった。

「いいえ。もちろんそれもありますけれど…というより、精霊界の方へお邪魔させていただいたときは、それが理由でしたの」
「では、その話会のときに、別に理由ができた、と?」
「ええ。そういうことになりますわね」
「いったいなんですか?その理由って?」
「そうですわね、牽制の意味を込めて、お二人にはきちんとお話しておくのも悪くはないかもしれませんわね」
「牽制?」
「そうですわ」

 くすくすともったいぶった笑いをするラクスに、アスランとニコルは眉を顰めて顔を見合わせた。
 この、外見だけは優しく穏やか加えてやわらかな女王陛下は、いったい何が目的なのだろうか。
 男二人で顔を見合わせ困惑していると、ラクスがおもむろに発言した。

「私の目的は、カガリ様ですわ」
「カガリ?」
「たしか、地球の皇女…でしたよね。第一回目の精霊界での話会と第二回目の此ノ花ノ国での話会、両方に、皇の代理として参加なさった…」
「ええ、そのカガリ様ですわ」

 ニコルの確認に、ラクスが満面の笑みで頷いた。

「私一目惚れですのよ。お二人とも、応援してくださいね」
「まぁ、別に邪魔するつもりは甚だありませんが」
「それで十分ですわ、アスラン。後は実力で振り向かせて見せますもの。もっとも、邪魔が入ってもそれを排除すればよいだけですけれど」
「そうでしょうね」
「……(汗)」

 相変わらずの笑顔で語るラクスに、アスランは動じることなく(けれど僅かにため息交じりで)応じる。ニコルの顔は少々引きつっていたが、、だからどうだというわけでもなさそうであった。
 その証拠というわけでもないが、さっさと瞬間的な驚愕その他諸々の感情から立ち直り、改めて口を開く。

「ああ、そういえば…皇には皇子もいるとか」
「はい。カガリ様の双子の弟君だそうですわ。―――たしか、お名前はキラ様と」
「二つの話会のどちらにも、参加はしてなかったですよね」
「ええ。カガリ様のお話では、心配だからカガリ様ご自身が、キラ様が話会に参加するのをお止めになったそうですわ」
「心配?何がです?」
「さぁ…?そのへんは、お時間もありませんでしたし、あまりお話できませんでしたので。けれど、今日はさすがにお姿くらいは見られると思いますし、そのときに分かることもあるでしょう」
「そうですね」

 そこで会話を打ち切って、ニコルは思い出したようにアスランへ顔を向けた。珍しく、彼が会話に参加してこなかったのだ。常であれば、どれほど自分が興味のないことでも、ある程度の礼儀として、自分の意見の一言くらいは据えるのに。
 不審に思い顔を向けたそこには、なにやら考え込んでいるふうのアスランの姿。

「アスラン、どうかしたんですか?」
「あ、ああ…いや、別になんでもない」
「そうですか?それならいいんですが…」

 このとき、その話はそれで終わった。
 アスランとニコルはそれぞれ自室に戻り、話会は地球時間で二十時間後に迫っていた。















he was shivering with cold.















----+
 あとがき+解説 +---------------------------------------------------

 あれ?キラサイドのはずがキラが出てこなかったです。しかも一話目よりも時間が戻ってる(滝汗)この約二十時間後が、つまりはニコルがアスランを探しに来た第一話になります。
 次こそは!!次こそは、絶対にキラを出します!!キラがでます!!
 ラクカガ…。別にそんな気ぜんぜんなかったのに。突然思いついちった(汗)
 ご意見ご感想など頂けたら嬉しいです---2003/08/05

--------------------------------------------------------+ - 0 + +----