+ asuka +
--eden
















夢さえ見れなくてもいい
声すら届かなくてもいい
形さえ失ってしまっても
私はこうして満たされている




















 朱鳥の本性は灼熱。空を舞う炎。





「お前は本当に分かっているのか!!俺たちにとって、あいつらはあまりにも弱すぎるんだそ!!」
 それは白蛇の族長の子であるイザークが、朱鳥の族長の子であるアスランに向けて放った言葉だった。
 彼とアスランは仲が良くない。だが、互いに嫌い合っているということもなかった。むしろ地位も立場も年齢も近いので親しみやすさでいえばかなり仲が良いのかもしれない。
 だが、仲は良くないのだ。
 アスランとイザーク。その関係はお互いが属する種族のその本質に近いのかもしれない。
 白蛇の本性は流れる水。その光。温かく、凍てつくもの。
 それは朱鳥と対であり、同質にあるもの。
 彼らの属する世界とは別の世界。地球の皇子キラは二人を見て云う。それは磁石の同極が反発するようなものだと。

 そのイザークの上の台詞は、彼なりの親切心であるといってもいいのかもしれない。
 地球の皇子への恋慕の情に悩む、朱鳥への、最大限の。
 恋々(れんれん)たる思いを抱えて、どこへ踏み出すこともできない好敵手への。

 抱きしめるだけなら問題はない。愛の言葉を交わし、その身を寄せ合う。
 それだけならば、彼らの間にはなんの障害も、迷いもない。
 それだけでは足りないから、愛とはやっかいなのだとは、当事者が思ったことか、その周囲が思ったかとことか。あるいはまったく関係のない第三者か、自分によった詩人の言葉か。

 力の限り抱きしめる。
 そのすべてを欲して。

「ねぇ、アスラン」
「なんだい、キラ?」
 穏やかなに掛けられた呼びかけに、僅かな疑問符を添えて返した。

「あのね、僕、それでもいいよ」
「キラ?」
 穏やかな微笑を湛えて優しく紡がれるその意味が分からなくて、眉間に皺を寄せた。

「だって、アスランが好きなんだ。誰よりも」
「それは俺だって…」
「だから、それでもいいんだよ」

 抱きしめてくる腕は優しくて。
 抱きしめ返す腕は震えていた。
 意を決して、あるいは震えを止めるために、腕に力を込める。
 温かな体温と、ゆるやかな鼓動音が、体全体で感じられた。
 それはそのまま、愛しい人の生命の勇吹。
 命の律動。

「大好き」

 それが彼の最後の言葉。
 抱きしめられた腕の中で、満たされたような微笑を浮かべて。
 灼熱の炎に焼かれて消えた。

「大好きだよ、俺も…」

 涙は焔(ほむら)に乾き泡(あわ)と消え。
 声は炎の爆(は)ぜる音にかき消える。
 炎はやがて風に舞い。
 四散した。















for all time ... .















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 あとがき+解説 +---------------------------------------------------

 書き始めた当初の予定通りの悲恋(バッドエンド)で終了。間に入るお話も設定も全部すっ飛ばして最後だけ書きました。地球の王ももっとたくさん考えてたし…。こうなった理由は最終回(50話)のテレビ感想を読んでいただければ分かります(これUP時点ではまだないですね/汗)。サブタイトルはすっごく迷いました。サブタイトルは天使の階級にしようと思ってましたから、最後はヘブン=天国の方が合っているのです。でもエデン=楽園の方が話の中心情に近いんです。快楽的で。――どちらにしても、これは本当にすっ飛ばした終わりなので完全なものではないし、とりあえずはこちらのサブタイトルで行こう。もし仮にこの話をきちんと一から十まで書ききる機会があれば、そのときにまたサブタイトルも改めよう。と。最後の一文は「永遠に…。」です。この表現方法はけっこうたくさんあって、どう云うのが一番あってるかな〜と思いつつ、よく分からないままにこれを採用。SEEDだしエターナルを使って書こうかとも思ったのですが…。まあ、間違ってたら云ってください。即直したいです(切実)。
 ご意見ご感想など頂けたら嬉しいです---2003/09/26

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