はっぴーめりぃくりすます














 ジングルベルの鈴が鳴る

 今宵は聖なる夜の頃

 枕元には贈り物

 今年は何が貰えるのかな?

 大丈夫

 僕は今年も良い子だったもの

























 テーブルの上にはおいしそうな御馳走の数々。

 まだ湯気が立ち上る暖かそうなそれらの中央には綺麗な炎の灯る蝋燭の飾られた大きなケーキ。

「お母さん。これもテーブルに運ぶの?」

 銀の髪に藤の瞳の少年は、カウンターごしから今だキッチンで料理中の母親に声を掛けた。

 今日はクリスマス。

 残念ながらお父さんはお仕事でいませんが、その代わり。

 大好きな幼馴染でお隣さんの紅真くんと一緒にクリスマスパーティーです。

 時刻はただいま午後の六時。

 もうそろそろ紅真くんが彼のお母さんと一緒に紫苑くんの家にやって来る時間になります。

「ええ、お願い。紫苑」

 お母さんは忙しく手を動かしながら紫苑くんに云います。

 紫苑くんは二つ返事でそこに用意されている御馳走の数々をテーブルへと並べていきました。












 ピンポーン。

 インターホンが鳴り、紫苑くんはお母さんに云われるよりも早くに玄関に駆けて行きます。

 誰が来たかは確かめなくても分かります。

「いらっしゃい、紅真」

「よぉ、紫苑」

 勢いよく玄関を開けたそこにいたのは、もうよく見知った人物。

 紫苑くんの幼馴染の紅真くんと、そのお母さんです。

 「メリークリスマス!!」

 それがお馴染みの掛け声です。

 紫苑くんも紅真くんもとても嬉しそうな。そして楽しそうな笑顔で互いに挨拶を交わします。

 紫苑くんのお母さんもやって来て、紅真くんのお母さんと挨拶をしています。

 ダイニングへと場所を移動して、子供達は子供達同士。親は親同士で話しが弾みます。

 いつもいつも顔を合わせて一日中遊んでいるのに、いったい何をそんなに話すことがあるのかと。

 息子達の仲良し振りに、お母さん達はいささか苦笑気味です。

「紅真、今日は泊まっていけるんだよな」

「ああ。母さんがいいって云ってた」

 クリスマスパーティーの後は一緒に寝て、サンタクロースを待つのです。

 もっとも。

 サンタクロースがお父さんお母さんであることなどもう知っていましたが…。

 でなければお泊まりなどできないでしょう。

 たくさんの御馳走。

 丸いケーキは幸せの象徴。

 幸せをみんなで分け合います。

 綺麗な電飾の散りばめられたクリスマスツリー。

 クリスマスパーティーの醍醐味は、やっぱりプレゼント交換。

 紫苑くんと紅真君も、それぞれお互いが用意したプレゼントを交換します。

「ありがとう、紅真」

「こっちもな、紫苑」

 お互いにお礼を云い合って、さっそく包みを開けてみます。

 綺麗に包装された包み紙を、丁寧に開けていく紫苑くんとは対照的に。

 紅真くんはかなり豪快な開け方をしていきます。

 一見まるっきり正反対の二人だからこそ、むしろこんなにも仲良しになれるのかもしれません。

 さて、二人はお互いに何をプレゼントしたのでしょうか?

「あっ、これカフスだ」

 紫苑くんが云いました。

 紫苑くんはいつも左耳に金のカフスをはめています。

 紫苑くんのお家に代々伝わる家風のようなものです。

「気に入ったか?」

「うん、ありがとう」

 紅真くんが訊ねれば、紫苑くんはにっこりと笑ってもう一度お礼を告げます。

 紅真くんは頬を赤く染めて俯きます。

 真っ直ぐな瞳でお礼を云われたから、どうにも気恥ずかしくて…しょうがなかったのです。

 紫苑くんの手にあるのはぴかぴかのカフス。

 小さな細工が丁寧に施されています。

「でも…これ、高くなかった?」

 紫苑くんが心配そうに聞けば、

「別に」

 と云って、紅真くんはそっぽを向いてします。

 紅真くんがそう云う時は、気にすることじゃない。という意思表示だから。

 紫苑くんはそれ以上は訊きませんでした。

 代わりに別のことを訊ねます。

「紅真は?気に入った?」

 自分のプレゼントが気に入ってもらえたかどうか、紫苑くんはかなり気にしているのです。

 それはもちろん紅真くんも同じでしたが…。

 だから紅真くんは答えました。

「ああ…サンキュな、紫苑…」

「うん」

 紅真くんの答えに、紫苑くんもホッと胸を撫で下ろしました。

 思わず紫苑くんの表情から笑顔が零れるから、紅真くんはまた頬を赤く染めました。

 紫苑くんが紅真くんにプレゼントしたのは、黒い石のペンダントです。

 勾玉…という何かのお守りらしい。

「お守り?」

「うん。買いに行った時そう聞いたよ」

 だからそれに決めたのだと。

 紫苑はそう云った。

「ふ〜ん…」

 紅真はそのプレゼントを眼前に掲げて見せる。

 黒いそれは、何か胸に語り駆けてくるような…なんとも不思議な輝きを放っていた。

















 輝く。

 光り。

 君を護る
















 この輝きが、君を護ってくれますように…。
















 夜はもう更(ふ)けて。

 天(そら)には満天の星。

 その下で、紫苑くんと紅真くんはすやすやと寝ています。

 何かいい夢でも見ているのでしょうか?

 とても幸せそうな寝顔。


キィ。


 小さな音がして、二人が眠る暗闇の部屋に一条の光が入ります。

 サンタクロースがやって来たのです。

 そっと二人の枕元にプレゼントを置いていきます。

 プレゼントの中身?

 それは、明日起きてからのお楽しみ。

 今はすやすや、すやすや。

 良い夢を……。





















 ジングルベルの鐘の音

 今宵は聖なる祝祭を

 天に光るは星の煌き

 夢の中ではいつでもどこでも

 大切な人と

 一緒です






















おわり















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こめんと *----



クリスマスネタ〜。
邪馬台幻想記でクリスマスネタ!
パラレルじゃなきゃできないです。
なかよし」「おるすばん」と同じで絵本風に書いてみました。
いかがでしたでしょうか?
なんかいつも同じような話し書いてる気がする…(汗)
感想いただけたら嬉しいです。



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