純情小雪 



 それは、輪廻を廻る物語――。



 なぁ、知ってるか?
 国に縛られぬ、放浪の民のことを。
 山の奥や海の中。
 およそ里を作り上げるには向かないそこで生きる根無し草。
 お前は知っているはずだ。
 時々、そういう民は里へ下って米やら麦やら…つまりは山の奥。海の中では得られぬ物資を調達する。
 別に力付くで掻っ攫うわけじゃない。ちゃんとした取引さ。
 たとえば獣の肉や毛皮と。
 たとえば貝や魚や海草と。
 互いに得られぬものを交換し合う、これは立派な取引さ。
 なぁ、お前なら知っているだろう。
 根無し草の俺。国など知らぬ俺。
 けれど俺は『王子』のお前と面識があるんだぜ。
 俺の親父はお前の親父と何やら交換し合っていて、親父の後ろで俺はお前の姿を見つけた。
 俺とは逆の真っ白なそれ。
 まるで真冬の雪のようだ。そう思った。
 光り輝く淡い白。
 まるで何も知らない――猛暑の日差しの下だとか、極寒の中の指先だとか、そういった耐えるものすべて――何も知らないかのような。
 純白だ。
 目を見開く俺を見て、お前はことりと小首を傾げた。



 くれない一番星 お前は何をしてるのかと 知らぬ 顔(かんばせ)、啼いていた。